【3-1】犯人からの招待状
【2-1:最初の選択】の最後で、【3-1:犯人からの招待状】が正しいと思った方はこちらです!
【犯人からの招待状】
私は自分の直観を信じ、大富豪からの招待を断った。
私には確信があったのだ。
あの招待状は、大富豪からではなく犯人が私に送ってきたものだ。
私が孤島の別荘へ行っている隙に、犯人は別の場所で何者かを殺害するに違いない。
招待状が届いてから数日が経ったある日、私のもとに一人の刑事が尋ねてきた。
「名探偵さん、実はお話したいことがありまして」
刑事は神妙な面持ちで私に言った。
刑事が尋ねて来たという事は、つまりは私の選択肢は正しかったという事だ。
なぜそう言い切れるのかって?
小説やテレビといったフィクションの世界では、
名探偵と刑事がコンビを組んで難事件を解決するのがセオリーだろう。
ただし、それはフィクションの世界に限った話だ。
名探偵は警察ではない。
強引にでも自分から首を突っ込まない限り、事件に関わることなんて普通は出来ないのだ。
既に別荘で事件が起きたのだとしたら、刑事が私を訪ねてくることはまず無いと考えていいだろう。
つまり、あの招待状は犯人からのものだったという私の推理は正しく、
それを受け取った時点で私もこれから起こる事件の登場人物の一人になったというわけだ。
「ずっと待っていましたよ、刑事さん。例の招待状の件で私を訪ねに来たのでしょう?」
私は自信満々に刑事にそう尋ねた。
「さすが名探偵さん。あなたの仰る通り、大富豪さんの件でここに来ました」
やはり、私は正しかった。
招待状が来たのだから、事件は別荘で起こるに違いない。
そんな考えは、いくらなんでも安直過ぎるだろう。
「先日、大富豪さんが孤島の別荘で何者かに殺害されまして・・・」
刑事のその言葉を聞いて、私は自分の耳を疑った。
「ちょっと、ちょっと待ってくれ。大富豪さんが殺されたって?」
「はい。パーティーの際に何者かに」
「既に大富豪さんは亡くなっているのか?それなら、なぜ刑事の君がここへ来たのだ?
いつもなら、私が事件に首を突っ込もうとすると、君たち警察は揃いも揃って
私のことを厄介者扱いするではないか。
まさか君たちの方から、私に捜査の協力をして欲しいと言いに来たわけではなかろう」
私は血相を変えて刑事にそう言い寄った。
「申し訳ありませんが、そのまさかです。
それに、亡くなったのは大富豪さんだけではありません。
大富豪さんのパーティーに参加した招待客の全員が、彼の別荘で亡くなっている状態で発見されました。
大富豪さんは数名に招待状を送ったのですが、唯一あなただけが大富豪さんからの招待を断った。
私はその理由を聞きに来たのです。
どうか、捜査に協力いただけませんか?」
私は頭の中が真っ白になった。
もし私が大富豪の招待を受け別荘へ行っていれば、
全員が殺害されるという最悪の事態を防ぐことが出来たかもしれない。
もし私が大富豪の招待を受け別荘へ行っていれば、
事態は大きく変わっていたのかもしれない。
私は誤った選択をしたのだ。
件を解決するどころか、事件に関わることすら出来なかった。
残念!
作者である私の勝ちですね!