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【16-6】パティシエの部屋

【パティシエの部屋】


私はパティシエの部屋の扉を叩き、彼の部屋へと入った。


パティシエは大富豪を殺害した犯人が誰だったのかをしきりに尋ねてきたが、

私が真犯人の正体を明かすことは無かった。


「申し訳ありませんが、この場では大富豪さんを殺害した人物が誰なのかを

お伝えすることは出来ません。

ですが、それはパティシエさんの為でもあります。

もしあなたが大富豪さんを殺害した犯人の正体を知れば、

口封じのために犯人があなたを襲う可能性が高くなる。

そうならない為にも、今はまだ知らない方が良い。

世の中には、知らない方が幸せな事もあるものですから」

 

私からそう説得されたパティシエは、渋々だが納得した様子だった。


「既に聞いていると思いますが、

あなたのお店は大富豪さんから全てを託された弁護士さんが守ってくれるはずです。

大富豪さんに代わって言うのもおこがましいことではありますが、

どうか彼の愛した味をこれからも守り続けてください」


それは大富豪の最期の願いであり、私の本心でもあった。




今回の事件において、パティシエは《真犯人》でも《共犯者》でもない。




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