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【16-4】記者の部屋

【記者の部屋】


私は記者の部屋の扉を叩き、彼の部屋へと入った。


「記者さん、あなたは一体どちら側なんですか?

あなたが今回の事件の真犯人でないことは分かっています。

ですが、真犯人の《あの人》が今回の事件を全て一人で考えたとはどうしても思えない。

あなたは何も知らないただの招待客ですか?

それとも、私と同じこちら側の人間なんですか?」


私がそう尋ねると、

「あなたも、《あの人》からお願いされた一人だったんですね」

と記者は言った。

 



彼は今回の事件の真相を知っている人物の一人だった。

 

そして彼は、今回の事件における彼自身の役割を私に話した。

 

今回の事件は、元はといえば彼の提案によるものだった。

 

記者として幾つもの事件を取材してきた彼は、《あの人》と同じような境遇の人物を何人も見てきた。

そして《あの人》自身が抱えている悩みや不安に、記者は前から気付いていた。


そこで記者は過去に起きた事件を基に何かいい方法はないかと考え、

大富豪を殺害することを《あの人》に提案したのだ。




「なるほど、そういう事でしたか。

ちなみにですが、あなたが手に握っていた例のメスの件も、

あなたから提案したものだったのですか?」


「あの件については、《あの人》から頼まれたんですよ。

《あの人》の目的は、最初から大富豪さんを殺すという事だけでしたから。

名探偵さんならご存じだと思いますが、この孤島という閉鎖された空間では、

二次被害の発生率が非常に高くなる。

二次被害を防ぐためには、私のような『犯人と思しき人物』の存在が必要ですから。

彼らの警戒を私だけに向ければ、二次被害の発生率は大きく下がると思ったんです」

 

たしかに記者が言うように、皆の警戒を誰か一人にだけ向けるようにすれば、

その分他の人物への警戒心は薄れる。

 

だが、そんなことをすれば記者自身の身が危なくなるはずだ。

 

それでも彼がその役割を担ったのは、リスクよりもリターンの方が大きいと判断したからだった。


「私は今回の事件を当然記事にするつもりです。

事件のパーティーに参加していた当事者が書いた記事は、世間の注目を集めるでしょう。

そうなれば、私は記者として名を馳せることが出来る。

そのためには、多少の危険も覚悟のうえでしたから」




記者は今回の事件に大きく関わっていた人物であり、

今回の事件における彼の役割は『認知』であった。


しかし、彼は今回の事件を提案し、『犯人と思しき人物』を演じただけの《共犯者》であって、

《真犯人》ではない。



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