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【16-2】俳優の部屋
【俳優の部屋】
私は俳優の部屋の扉を叩き、彼の部屋へと入った。
俳優は大富豪を殺害した犯人が誰だったのかをしきりに尋ねてきたが、
私が真犯人の正体を明かすことは無かった。
「申し訳ありませんが、この場では大富豪さんを殺害した人物が誰なのかを
お伝えすることは出来ません。
ですが、それは俳優さんの為でもあります。
もしあなたが大富豪さんを殺害した犯人の正体を知れば、
口封じのために犯人があなたを襲う可能性が高くなる。
そうならない為にも、今はまだ知らない方が良い。
世の中には、知らない方が幸せな事もあるものですから」
私からそう説得された俳優は、渋々だが納得した様子だった。
「女優さんから全て聞きました。
あなたが女優さんと付き合い始めた経緯や、彼女と大富豪さんの過去の関係も全て。
大富豪さんに代わって言うのもおこがましいことではありますが、
これからも女優さんのことを守ってあげてください。
彼女には、あなたのような人が必要ですから」
それは大富豪の最期の願いであり、私の本心でもあった。
今回の事件において、俳優は《真犯人》でも《共犯者》でもない。




