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【16-1】弁護士の部屋
【弁護士の部屋】
私は弁護士の部屋の扉を叩き、彼の部屋へと入った。
弁護士は大富豪を殺害した犯人が誰だったのかをしきりに尋ねてきたが、
私が真犯人の正体を明かすことは無かった。
「申し訳ありませんが、この場では大富豪さんを殺害した人物が
誰なのかをお伝えすることは出来ません。
ですが、それは弁護士さんの為でもあります。
もしあなたが大富豪さんを殺害した犯人の正体を知れば、
口封じのために犯人があなたを襲う可能性が高くなる。
そうならない為にも、今はまだ知らない方が良い。
世の中には、知らない方が幸せな事もあるものですから」
私からそう説得された弁護士は、渋々だが納得した様子だった。
「大富豪さんに代わって言うのもおこがましいことではありますが、
パティシエさんのお店をよろしくお願いします。
彼が愛してやまなかったあの味を、どうか守ってあげてください」
それは大富豪の最期の願いであり、私の本心でもあった。
今回の事件において、弁護士は《真犯人》でも《共犯者》でもない。




