7 三つの噂
閲覧ありがとうございます。
至らない点があるかと思いますが楽しんでいただけますと幸いです。
今日もマリアは学校に来ていないようだ。
ショウと一緒にヤマダ先生にマリアの出席状況を確認しようと職員室へ行った。しかし、ヤマダ先生は今日は遅れて出勤してくると他の先生が言っていた。
アヤカの話を聞いた限りだと、ヤマダ先生はマリアに、と言うか生徒に全く興味が無いようだ。
容疑者から外していいだろうか。
マリアも体調不良で欠席になると連絡があったそうだ。
三年B組の様子も見に行ったが、今日もまたクラスメイト達は、マリアの存在なんて元々なかったかのように平和に穏やかに過ごしている。
アヤカはこちらに気づくと手を振っていたが、それ以外は何も変わらない日常がそこにはあった。
ショウとは昼休みに屋上で会う約束をし、解散した。授業が始まるチャイムが鳴っている。
あれからマリアのSNSは何も更新されていない。俺が怪しんでいて、マリアと最後にメッセージのやり取りをしていたフライのSNSも更新されていない。マリアが今までSNSを更新しない日なんてなかった。
おかしい。
おかしいと思うけど、俺の考え過ぎで、本当にただの体調不良と言う線もやはりあるのだろうか……。
ブッー。
スマホのバイブ音がなる。俺は皆に見えないように小さくガッツポーズをした。トモキから返信が来たのだ。スマホを先生に没収されては元も子もないのですぐに画面を開きたかったが、グッとこらえた。
全く授業に集中できないまま、午前の授業が終了した。
「トモキから連絡は来ましたか?」
昼休み、屋上で爽やかな風が吹く中、俺はショウと一緒に昼食をとっていた。
「来たよ。今開くから待ってて」
「こんなに早く返信が来るとは思いませんでしたね。アツシくんの星、効果あったんですかねぇ。ぶぶっ」
「だから、笑うなって。あ、これ見て」
『こんにちわ☆連絡ありがとー!
俺の男のファンは中々居ないから超嬉しかったょ☆今日の夕方なら空いてるよ!君はラッキーだね!そおゆうことで☆』
「星って流行ってるんですか?ぶぶっ」
「流行ってるみたいだな。こんなにノリノリで返ってくると思わなかった」
トモキの返信を見て俺も思わず苦笑してしまった。星が本当に流行ってるのかも知らないし、トモキの文章は何だか読みにくく感じた。
「とりあえずよろしくお願いしますって返すわ」
「これで交渉成立ですね。トモキから何か有力な情報が聞き出せるといいのですが……質問する事決めていきますか?」
「そうだな……きっと時間も限られているし」
トモキに聞きたい事はマリアのファンの一人として沢山あった。マリアとの慣れ染めとか、プライベートのマリアの様子とか。
しかし今のマリアの状況を知っているのかという事を一番に聞き出さなければならない。もしかしたら、トモキがマリアを監禁しているという事だってあるかもしれない。モラハラが酷かったというくらいだから、考えられなくもない。
「アーツーシーくん!!」
「え?アヤカ?!どうしたんですか?」
アヤカがこちらに手を振って、ふわふわとツインテールを揺らしながら駆け寄って来る。ショウは驚いた表情をしていた。
「アヤカも協力してくれるって言ってたんだ。マリアの事も詳しいし」
俺はショウに説明した。それにアヤカは俺達よりも何倍もマリアの事を知っている。アヤカが居れば情報の幅も広がるだろう。
「ショウくん何よその目は!昨日の敵は今日の友って言うじゃない!?私もう悪い事はしないもん!!」
「本当ですか~?」
ショウは腕を組みながら横目でアヤカを見ている。まだ疑っているようだ。
「本当だもん!ありのままの私の方が可愛いって気づいたの!マリアにもちゃんと謝るもん……」
「そうですね……わかりました。でも僕はまだ仲間だと完全に認めたわけではないですからね!」
「アツシくんがいるからいいもん!べーっ」
「二人とも落ち着いて……」
二人が分かり合える日が来るのはまだまだ遠いようだ。俺も完全にアヤカを許したわけではない。ちゃんとマリアに謝罪するのを見るまでは許せない。
しかし今はマリアの安否を確認することが最優先だから、アヤカを信用して協力し合うしかないと思っている。
「アヤカ、トモキとは今日会う事になったんだ。メッセージのやり取りが上手くいってさ」
「良かったじゃない!そうそう!今日は二人に話したい事があるの。トモキについて私が知ってる事、簡潔に三つにまとめて来たの!」
ブッー。
スマホのバイブ音が鳴る。トモキからだ。
「アツシくん先に読み上げていいよ」
「わかった」
『今日の四時に駅前のカフェで待ってるよ☆俺が光り輝いてるからすぐに見つけられるだろうけど☆』
「やっぱり変わった人ね。ナルシストよねこの文からして。そうそう。気を取り直して話すけど……この三つだけは覚えておいて。トモキはね……」
……どうやらトモキはとても癖が強そうだ。
最後まで読んでいただきありがとうございました。