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画面の中の美少女へ  作者: 紅井さかな
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6 新たな仲間

閲覧ありがとうございます。

至らない点があるかと思いますが楽しんでいただけますと幸いです。



さっきまで優しく降っていた雨も気分が変わったのかザーザーと激しく降り出してきた。真っ黒な分厚い雲はどこまでも続いている。



「一人になりたい」と言うアヤカと別れ、俺は流れでショウと一緒に帰る事になってしまった。ザーザーと降る雨と俺たちの足音だけが響いている。ゆっくり歩いている余裕はない。風もあるせいか、傘があっても全く役に立たない程、四方八方から雨が襲い掛かって来る。


「雨酷くなってきましたね」

「あぁ。ちょっと腹減ってきたな。雨宿りにファミレスでも行く?」

「は、はい!」


俺はショウと近くのファミリーレストランへと向かった。店内に入るころには、紺色のブレザーの制服に雨がぽつぽつと染み込み水玉模様のようになっていた。髪も全体的にしっとりして、無造作になってしまった。ショウは前髪を凄く気にしているようだった。店内はそこまで人がいなかった。流行りのJ-POPが流れている。ゆっくりと過ごせそうだ。


俺はポテトとメロンソーダを、ショウはチョコレートパフェを頼んだ。


「あの、これ使ってください。僕、二枚持ってるので」


そう言ってショウはフェイスタオルを渡してきた。女子力が高いというか、準備が良いというか凄くしっかりしている。


「ありがとう……そう言えばまだ自己紹介してなかった。俺はアツシ。よろしく」

「あ、改めまして、僕はショウです。アツシくんとは隣のクラスなので、ぜひ仲良くしてください!!僕の周りにマリアの熱狂的なファンが居ないのでぜひアツシくんと仲良くなりたいのです!!僕も一緒にマリアを探させてください!」


ショウは立ち上がり机に手を付きながら前のめりになって話してきた。凄く熱意が伝わってきたけど、湿気のせいか眼鏡が曇っている。


「あーあの、前見えてる?」

「あ、これは失礼……」


ショウは顔を隠すように深く首を曲げながら眼鏡を拭いていた。そして拭き終えると体制をサッと整えてこちらを向いた。


「よろしくお願いします!」

「よろしく……」


ショウが握手を求めて来た。ショウの手は色白で手首が細くて綺麗だった。

ポテト、メロンソーダ、チョコレートパフェが届くとお腹がぐーっとなるのが聞こえた。ショウはチョコレートパフェの写真をさまざまな角度から一生懸命に撮ってから食べていた。


「あの、アツシくんに聞きたい事があるのですが……」

「何?」


ショウはまた慣れた手つきでスマホの画面をこちらに見せて来る。


「この「マリアのファンアカウントあっくん」ってアツシくんのものですか?」

「ぶふっっ……何で知ってるんだよ!誰にも話したことないのに!」


俺はメロンソーダを吐き出してしまった。そして自分の顔が青ざめていくのが分かる。アカウントがバレたなんて恥ずかしすぎる。


「アヤカの裏垢の件と言い何でショウはそんなに他人のアカウントに詳しいんだよ」

「僕、少々人よりもネットに強いんですよね……へへっ……」


ショウはニコニコしながらチョコレートパフェを頬張っている。


「褒めてねーから……ショウはアカウント持ってないの?」


アヤカじゃないけどショウはオタク系の人なのか?と思ってしまった。どうやって俺のアカウントを見つけ出したのだろう。アヤカと違って俺は写真さえも載せていないのに。


「でも大丈夫です!僕、口は堅いので!まず友達が少ないので!アツシくんを裏切るような事は絶対にないので安心してください。僕のアカウントは見る専門なので、基本動かしていません」


「そうか……さっきのアヤカとのやり取りを見て、マリアが好きって気持ちは凄く伝わって来たから……信じてはいるよ」


「アツシくん……!!そういう所好きです!!マリアのファンアカウントを持ったアツシくんならもしかして僕の事を信じてくれるかもって思って、あの時屋上に行ったんです」


ショウがまた、握手を求めて来る。


「そ、そっか……握手好きだよな……」

「はい!」




少し変わっているけど悪い人ではなさそうだ。マリアを探すにあたって、ネットが得意だという事は凄く強みになる。一人でマリアを探そうと思っていた俺にこうして協力したいと言ってくれる人が現れたことが本当は何より心強かった。


それに俺のファンアカウントを見てもショウは馬鹿にして来る事もなかった。マリアを好きだという気持ちもきっと同じくらいなのだろう。対等に関わって行けそうだ。






「で、本題なんだけど、アヤカが言ってたマリアの元カレ、どう思う?」


「トモキでしたっけ?まずアカウントを見てみましょう。さっきアヤカに教えてもらったんです」

「いつの間に……」


ショウはまた慣れた手つきでトモキのアカウントと思われるものを見つけ出した。


「これですかね?」

「そうみたいだね」


トモキと言われるその人物は俳優のように整った顔立ちをしていた。年齢は十九歳。茶髪で男の俺から見てもかっこいい。切れ長の二重の目が印象的だ。こんなにかっこいい人に迫られたら女の子は確かに好きになってしまいそう。


「むむっ……悔しいですけど、これはイケメンですね……」


ショウも俺と同じ事を思っていたようだ。


しかし写真で見る感じだと、優しそうでモラハラやDVをしそうには見えない。SNS上で目立った活動はしていないようだが、自撮りの顔写真を上げて人気を博しているようだ。女性のファンが多いようだが、一人一人に丁寧にメッセージを返信している。


トモキの方のアカウントでもマリアと過去に付き合っていた事は公表されていなかった。マリアの殺害動画の件についてもトモキのアカウントには何も書かれていない。


二人の過去は二人以外は誰も知らないって事か。



「トモキとどうやって接触しましょうか」

「俺がトモキのアカウントにメッセージを送ってみる。いきなりマリアの事言ったら逃げられそうだから違う口実を作って、会えないかって……」





『トモキさん初めまして☆

俺はトモキさんに憧れている高校生です!トモキさんのようなカッコイイ男になる秘訣を教えていただきたくてメッセージを送らせていただきました!今度お会いできないでしょうか?』





「これでどうかな?」

「ぶふっ……この星は何ですか?」

「笑うなよ!この方が今風の若者らしいかなって」

「すみません。とてもいいと思いますよ!返信来ることを願ってます。ぶふふっ」

「だから笑うなって……」



他愛のない会話も何だかほっこりしてしまう。今日はいろいろな事があって何だか疲れた。



……マリアは今、何をしているのだろう。





「あ、アツシくん!雨が上がったようです。続きはまた明日話しましょう」






雨上がりの澄んだ空に浮かぶ月が美しかった。





最後まで読んでいただきありがとうございました。

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