30 協力者の正体
閲覧ありがとうございます。
至らない点があるかと思いますが楽しんで頂けますと幸いです。
学校の授業が終わる時間だ。
俺はまた仮病を使って学校を休んだ。ショウと話したいと言う気持ちはあるがまだクラスメイトには会う勇気がなかった。ショウやアヤカにも酷い態度を取ってしまったから嫌われているかも知れない。怖いけどそれでも話したいと、話さなければならないと思った。
俺はショウに指定された場所に向かった。学校を休んだ身分なので制服を着るわけにもいかない。しかし、家でいつも着るような少し古くなって毛玉のついたグレーのスウェットで外出するのもなんだか違う気がした。悩んだ挙句、上は白のパーカーに下は細身の黒いパンツとラフに見えるが無難な格好をして出かけたのだった。
1日ぶりに見る外の景色は見慣れた場所だと言うのにとても鮮やかに見えた。空が青い。雲が白い。花が赤い。なんだか新鮮だった。自然と気持ちは落ち着いていた。話す内容は何度も何度も考え、確認してきた。これでダメだったら先の事はその時考えれば良い。
何が少しでも良い方へ変わるだろうか?
学校から少し離れた場所にある公園についた。アヤカがこの場所を選んだという。公園の中はひと気がない。ひと気がないから選んだのか?真ん中にふるい小さな滑り台と端に錆びれたベンチが2つ並ぶだけの決して大きいとは言えない公園だった。何度かこの公園の前を通った事があったが中に入るのは初めてだった。正直、古くて狭くてひと気がないと先入観を持って入ろうとは思わなかった。
公園につくと二人はまだいなかった。俺は錆びれたベンチに腰掛けボーっと空を見上げていた。
二つの足音が近づいてくる。ショウとアヤカだ。当たり前だが二人は制服を着ている。以前のように喧嘩をしながら歩いてきた様子はなかった。穏やかに会話をしていた。そしてどこか距離が近いようにも感じた。側から見れば美男美女のお似合いのカップルだ。
俺はベンチから立ち上がって二人の方へ向かった。丁度、滑り台の横で集合した。
「アツシくん来てくれてありがとうございます」
ショウは穏やかな笑みを浮かべながら言った。
「アツシくん思ったより、元気そうね……よかった」
アヤカも安心したように微笑んでいた。
二人の優しい言葉に泣きそうになってしまう。
「俺、二人に酷い態度とってごめん」
俺はそう言うと垂直に頭を下げた。許して貰えなくても今の自分にできる事はこれだけだ。
「そんな、頭を上げてください!いいですよ!僕はアツシくんとこうしてまた話せて本当に嬉しいですから!」
「そうだよ!私も全然気にしてない」
「でも……本当にごめん」
「大丈夫ですって」
「……ありがとう……なんでこんなに優しいんだよ?」
今まで誰も俺の言葉なんて聞いてくれなかったのに。信じてくれなかったのに。どうしてだろう。
「僕達は友達だからです。アツシくんだけが何かが違うなんて事はないですよ?友達だから助け合うだけです。アツシくんも僕にそうしてくれたじゃないですか?」
「そうよ!?何でも頼ってよね!私これでも二人より一歳先輩なんだから!!」
「……ありがとう…」
悩む事なんてなかったのかもしれない。勝手に自暴自棄になっていただけだった。「幸せ」は近くにあった。見えていない、見ようとせず逃げていただけだった。考えすぎて自分に呪縛をかけていただけだった。諦めなくてよかった。本当に少しずつだけど俺は変われていた。
俺は嬉しさで泣きそうになるのを隠しながら、ショウに話を振った。泣いている所を見られるのはやはり恥ずかしかった。
「シ、ショウの話は何?」
「タナベさんの事よね?ショウくん?」
アヤカも真剣な表情で話を切り出す。ショウもさっきとは違い、少し低い声で話だした。
「……いいえ。トモキに謎のメールが送られてきた件、覚えていますか?マリアの殺人動画のURLが送られてきた件です。その犯人が分かったのです」
「え?」
「誰なの?」
「まあ、落ち着いてください。メールを送ってきた犯人と、マリアの殺人動画に出ていた黒服の人物は全く別の人物だと僕は思っています」
「つまり犯人は二人いるって事?」
「二人と言いますか、主犯と協力者と言う感じです」
「その協力者が分かったのです」
「そうなの!?」
「今からメールがどんな経緯で送られ、その協力者が誰なのかをお話しします」
ピリッと緊張感が走った。ショウは真っ直ぐな瞳で話を続ける。
「……その協力者は僕達が通う高校の関係者です」
「「え?」」
「ですから主犯も高校の関係者ではないかと思っているのですが、そこはまだ証拠が確実ではないので追々。屋上で僕達三人が出会ったあの日から僕はアツシくんとアヤカには内緒で一人でマリアの知り合いを当たっていました。一人で調べていました。そこで何人もの話を聞くうちに気づいたのです。協力者も、主犯もずっと近くでマリアを見張っていたんじゃないかって。やはりマリアの学校外の知り合いでは、全てを把握できないのではと僕は思いました。そこで学校の関係者が怪しいと思って、防犯カメラの映像を見せてもらいに行ったんです。先生には、反対されて大変でしたけど、何度もお願いに行って特別に見せてもらいました」
「まって、マリアを見張っていた人物なら、トシカズとかも怪しいじゃない?見るからに変態おじさんって感じだし」
「それはないだろ。トシカズの本命はフライだったんだよ。前に話さなかったか?マリアのストーカーよりもフライのストーカーだよ。実際にショウが危なかったし」
「そ、そっか。……それでそれで?」
「……防犯カメラに映っていたのです。協力者と思われる人物が。マリアの事件の数時間前の出来事でした。その人物は先生に学校のパソコンを使って良いか職員室に確認にも来ていたそうです。その人物は相当焦っていたのでしょうね。データを消し忘れていたのですよ。僕はパソコンが得意ですから、僕レベルになるとメールの履歴見つけられます」
「……で、その人は誰なの?」
「今その人物はとても焦っているのではないでしょうか?」
「「え?」」
ショウはゆっくりとこちらを見る。目の奥が笑っていない。
「そうですよね?アツシくん?」
最後まで読んで頂きありがとうございました。