第十五章 外奈(そとな)
「・・・・・外奈???」
「覚えていたんだね、嬉しいよ。」
「『嬉しいよ』って・・・・・・・・・・
あんたが私を突き落とした『張本人』じゃない!!!」
忘れもしない、あの日私はいつも通り、帰りたくもない家を目指して、重い足を引きずるように歩いていた。
友人と道草を食うわけでもなく、塾にも行かせてもらえず、一人ぼっちで毎日毎日、平坦な道を行き来するその生活は、もはや苦痛であった。
そして私が行き来している通学路には、一橋のちょっと大きな橋を渡る必要があった。唯一そこが、通学のちょっとした楽しみであった。
特に学校から帰る頃、夕方になり空が橙色に染まった頃になると、川の中へと沈んでいく真っ赤な夕日を、橋の上から見る事ができる。
その絶景は、時折カメラマンが撮影に来る程人気の場所であった。いつも一人だった私は、その橋に何十分も立ち尽くす事もある。
だって、家に帰っても、何も楽しくない、むしろ冷たくて痛い。
夕日が私の全身を暖かく照らしてくれる感覚だけが、唯一私が温もりに触れられる時間帯であった。
同じ通学路を使っていたクラスメイトからは、クスクスと笑われていたけど、でもそんな声、絶景を目の前にすれば、本当にちっぽけな存在に思えてしまうんだから。
橋を渡るクラスメイトや、帰宅途中のOLやサラリーマンは、帰る場所がある、帰った場所で楽しみがある。
だから夕日には目もくれず、淡々と自分の家を目指すか、友達と一緒に帰る時間を満喫する為、わざと寄り道をしたり、別れ際の談話に花を咲かせていたり。
そんな人々の生き方を見て、羨ましく思っていた。
私には、やりたい事もなければ、一緒の時間を過ごしてくれる相手もいない、話を聞いてくれる人もいない。
ただ、沈んでいく夕日だけが、私の冷めた心を温めてくれていた。
その日は、特に変わっている事もなければ、変わっている光景もなかった。
またいつも通り、あの冷め切った家に戻るのが嫌で、両足を擦り合わせながら、憂鬱になっていた。
だが、そんな私のいつも通りは、『彼の言葉』と、『背中の衝撃』で、全て崩れてしまった。
後ろから聞こえたのは、間違いなく、外奈の声であった。
だって、私は彼を意識していた。「似た者同士、仲良くなれるかもしれない」という、淡い期待を抱いた相手であった。
だから、声が後ろから聞こえたとしても、彼の声である事はすぐに分かった。ただ、振り返ろうとする猶予もなく、私はそのまま・・・
突き飛ばされてしまった
外奈と再会したコンには
もう『嬉しさ』も『喜び』もない
前世とは完全に縁のない生活を送りたかったコンにとっては
彼は 『一番会いたくない存在』であった




