序章2 髪結い
時が経つにつれ 自分達が徐々に成長していく
それに喜びを感じる傍ら ほんの少しの寂しさも交えていた
「・・・お兄ちゃん。
その鎧、重くないの?」
「鎧なんだから、当然だろ。
・・・あと、公共の場では、俺を『お兄ちゃん』とは呼ばない方がいい。」
「それくらい分かってるよ、今は城の中だからこうして普通に話しているの。」
鎧に身を包んだ兄を見て、ちょっと戸惑いが生まれる私の心。
いつの間にか、兄がどんどん強くなり、どんどん私から離れていく、そんな感覚がする。
・・・いや、もう私がアンに嫁ぐ事になった瞬間から、私達の間には大きな隔たりができてしまったのかもしれない。
私は、普段通りの兄も好きだけど、こうして凛々しく成長していく兄も好き。ただ、それを素直に喜べない私は、ちょっと嫌い。
別に嫉妬しているわけでもないのに、心のモヤモヤが晴れない。そして、その心を覆っているモヤの正体すら掴めないのだ。
「コン、君は本当に綺麗になったね。出会った頃とはまた違う、『女性』としての美しさが際立
っているよ。」
「そうですね。
コン、お前は気づいていないだろうけど、『髪質』も若干変わってるぞ。」
「・・・分かった?
いや、私も最近になって気づいたんだけど・・・」
多分、お義母さん達が良いシャンプーや香油を用意してくれたから、その効能がじわじわと現れ始めたんだろう。
里で生活していた頃は、ちょっと癖っ毛が目立っていたけど、最近ではもう跳ねている髪が見当たらないくらい、真っ直ぐになった。
前世の私も結構癖っ毛が酷かったけど、シャンプーや髪につける物を変えるだけでも、こんなに劇的な変化が起きるなんて、驚きを隠せない。
鏡から自分を見ても変化に気づくけど、触っただけでも明らかに以前とは違う。髪一本一本が丈夫になった上、頭が軽くなった気がする。
それに、頭を動かすと自分のサラサラした髪が肩を伝い、日光に当てるとキラキラ光っている様にも見える。
『日本人はブロンドに憧れる』 『外国人は黒髪に憧れる』
なんて話を前世で耳にしたけど、改めて見ると、ブロンドでも黒髪でも、やっぱり髪の質が良ければ、どっちでも美しいのかもしれない。
今の私のブロンド髪を黒に染めても、きっと綺麗だ。
真っ直ぐな髪ってすごい憧れていたけど、それがいつの間にか、私の知らぬ間に叶っていたんだな・・・