序章 新年の幕開け
この世界でも、やっぱり『新年の挨拶』をする文化があり、その代表として、陛下と殿下が挨拶する・・・のだが、今年は私も参加する事になった。
その話を聞いたのは、カウントダウン祭り中の事で、私は若干半ギレ状態で話を聞いていたのを覚えている。
だって、そんな話全然聞いていなかったから。仕事の無茶振りを振られた気分だった。
しかも、明日の朝に述べなくちゃいけない。こんなの無茶ぶりとも見て取れた。
ただ、さすがに辞退するわけにもいかない。私を選んでくれたアンや陛下達の為に、一晩で決心を決めた・・・というか、強引に決めた。
もうここまで来たらヤケクソだけど、私の場合、何も考えていたの方が上手くいくのかもしれない。バカラさんを助けた時もそうだったし。
ただ、お義母さんの本気メイクを目の当たりにしてしまうと、更にプレッシャーがのしかかる。もう恥じらいなんて何処かにいってしまった、今私の心を支配している感情はそっちではなく、完全に『自暴自棄』
この環境に慣れると同時に、その場任せの行動にも慣れてしまったのか・・・な?
そんなの慣れちゃいけないんだけどね、本来。
パタパタパタパタ・・・
ガチャ!
「おぉ! コン!!
素晴らしいじゃないか!! さすが母さんだ!!」
もう廊下に響く足音だけで、誰が歩いているのか察しがつくようになってしまった。アンの場合、早足で重量感のある足音だ。
「・・・アンもちゃんと着替えたのね。」
「勿論だ。
似合ってるか?」
「・・・はい、とっても。
いつもより凛々しくなっています。それに厳かで風格のある雰囲気が漂っていますよ。」
着飾っていたのはアンだけではない、遅れて部屋に来たヴァルも、アンとお揃い。
そして、余談より重装備になっている兄やバカラさんも来てくれた。ウルシ君は、まだ支度に時間がかかっているそう。
ウルシ君は、「自分は普通でいい」と言っていたけど、私が強引に巻き込んでしまった。だってずるいもん。
コンは 着飾った皆を目の前にして
自分も外見を少しは磨こうか・・・と思うのであった