序章 新年の幕開け
王都で初めて新年を迎えるコン
それを喜んでいたのは 彼女だけではなかった
「ほら、コン。ちゃんと目を瞑って、力入れないで。」
「・・・うぅ・・・」
「別に化粧をしているだけで、痛い事は何もしないわよ・・・」
ごめんなさい・・・お義母さん・・・
ただ私・・・前世でも化粧なんてやってこなかった人間・・・もとい人獣なんで、どうしても怖いんですぅ・・・
私って、『先端恐怖症』・・・なのかな?
さっきから化粧用の筆が顔面に近づく度に、何故か力んでしまう。
悪い事をされているわけではないのは、私でも十分分かっている筈のなのに・・・
化粧水もつけた事のない私だったから、つけた際の違和感が凄くこそばゆかった。
水とは違う、ドロドロとした液体が肌を伝う感覚に、ちょっと鳥肌が立ってしまう。
粉物を顔にパフパフされるだけでも、鼻がムズムズしてしまう。
だが必死になって堪えていないと、『お餅に振りかけられたきな粉』みたいな、『大惨事』になりそう・・・
それにしても、化粧品にも色々あるんだな。全部お義母さんの厳選・手製だから、安全ではあるけど、この量にはちょっと・・・引いてしまった。
前世のモデルとか女優も、こんなに化粧に時間を割いているのかな?
前世時代、私の母は確かに化粧はしていたけど、そこまで濃くはなく、そこまで似合っていた・・・とも言い難い。
そもそも私、前世でお母さんの顔をしっかり見た覚えがないかも。だからもう既に、前世の両親の顔なんて、ぽっかり消えている。
というか、覚える必要もなかったから、覚えなかった。