あなたは…だれ?
風星は、意を決して車から降り、橋に一歩を踏み出した。
その時だ…
「おーい」
どこからか声が聞こえた気がした。
「・・・?」
辺りを見回して見ても誰もいない。
(気のせいか?)
そう思いながら、風星はまた一歩を踏み出し歩き始めた。
だがまた、今度は、はっきりと後ろのほうから男の人の声が聞こえた。
恐るおそる振り返る。
振り返った先は、森。
ただ、この橋に導くかのように一本の道ができているのがわかる。
そこから、
「おーい!待ってー!!」と人が駆け寄ってくるのが、かすかに見えた。
風星は足を止め少し身構えながらも、待っていた。
もし、怪しい人でないのであれば、この橋を一緒に渡ろうと思ったからだ。
(まず、どこからきたのかを聞いたほうがいいかな。年齢と名前とあとは・・・)
(あとは・・・)
(ここがどこなのか。)
不安そうな表情をしながら、そんなことを考えていた。
ハッと我に返り前をみる。
「はぁ・・はぁ・・。やっと・・・人に出会えた・・・。」
と肩で息をしながら膝に手をつき風星のほうを見ている。
二十歳前後くらいであろう男の人と目が合った。
「あなたは・・・だれ?」
少し声が小さくなり震えていた。
どこの誰かもわからないひとと、ここがどこかもわからないところでどうすればいいかもわからない。
「僕は・・・」と男の人が話し始めた。
「信じてもらえないかもしれないけど、
仕事に向かっている途中でいきなり
すごい光に包まれたんだ。
そのあとまぶしくて、めがあけられなくて、
目をこすりながらやっと開けられたと思ったら、
どこかもわからない、こんな場所にいたんだ。」
うつむいて男の人は話を続けていた。
(なんだか私と同じ。でも、私の状況はまだ話していないから知らないはずだし。)
風星が考えながら話を聞いていると、うつむいて話をしていた男の人が急にパッと顔をあげた。
風星は少しびっくりし、ピクッと体が動いた。
「でも、一本道だったんだ。
だから僕はひたすら歩いた。
そしたら、人影が見えて
まさかと思って走ってきたんだ。
そしたら君がいた。」