うわさ
「ねぇ…しってる?
異世界につながる大きな橋があるって…。」
そんなうわさ話が中学生や高校生の間で流行っていた。
大人たちの間でも最近、あちらこちらで耳にするようになった。
まさかそんな漫画みたいな話、あるはずがないと誰も信じるはずがなかった。
麻島風星。32歳。
童顔でまったく32歳には見られない。大げさに言えば二十歳くらいにみられるほどだ。
前髪をおろしぱっつんにしているからか余計幼く見えるに違いない。
今日は久しぶりに、高校の同級生と近くのカフェに来ていた。
例のうわさ話の話題が出た。
「今さら、異世界なんてねぇ。流行るわけないのに。風星は信じてるの?」
「ただのお遊びで出回ってるだけでしょ!うちらのときもチェンメ流行ってたし!」
「確かに流行ってた。何人に送らないと呪われるとかってやつね。
あれビビッて信じてたな(笑)」
なんて笑いながら、あっさりとその話はおわった。
(そんな子供みたいこと、誰も信じないよ)
(でも万が一、本当にあったら面白い。いや、あるわけないか。)
そのときのわたしは、のほほんとそんなことを考えたりもしていた。
さーてそろそろ帰ろうかとその日は友達と別れて帰宅し、
何の変哲もない日常を送りその日は過ぎていった。
次の日――
行ってきまーす。とTシャツにジーパンで小さめのカバンを持ち、
元気よく家を出て黒の普通車に乗り仕事に向かうため車を走らせた。
風星の仕事は、娯楽の一つでもあるパチンコ店のスタッフをしている。
私服での通勤で、職場で着替えをしている。
それは、会社で決められていてそこの従業員は全員そうしている。
だからパチ屋で働いていることを自分で言ったり、お客以外は誰にも知られることはない。
そろそろ会社に着くころだったその時…
パァ―ッとあたり一面、光が差したかのように明るくなったかのように見えた次の瞬間。
風星はその光景に目を疑った。
「な・・・に・・?これ・・・!!!」
そこには見たことのない橋が架かっていた。
あたりは明るく遮るものもなにもなかったが、風星の通勤に橋など一つもない。
だがそこには、みたこともないくらいの大きな橋がある。
しかも、一本道で確実にそこを通らなければならない雰囲気だった。
風星は、来た道を戻ろうとも考えたが、
ここが一体どこなのかもわからない。果たして来た道を戻ったところで帰れるのか。
意を決して、車から降り、橋を渡ることにした。