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ひとつの命の灯火

作者: 咲桜

 快晴。その日は梅雨の時期ではあるものの、前日の雨水が滴り落ち、葉の上できらきらと輝きを見せる程光を浴びていた。私の家には庭があり、植木鉢があふれかえっている。質素だと思われるような植木たちが各々に生き生きとしていて、その日は特別美しく見えた。

 そんな中、一羽のアゲハ蝶が飛んできた。私は大の虫嫌いだが、窓越しに見る分には何とも思わない。その蝶は、何処にでも見られるような黒に薄黄色のアゲハであった。水を飲みに来たのか、羽を休めに来たのか。もしかしたら敵から逃げてきたのかもしれないが、私にはどうでも良かった。私の庭には、奥の方から繋がっている青いホースがあった。何の映えもない普通のホースである。そのホースの栓がしっかりと閉められていなくて、何秒か置きに水が出ていた。私はその栓を閉めに行こうと思ったが、とあることに気付いた。

 先程飛んできた蝶がホースから出ている水の周りをひらひらと飛び回っていたのだ。水が出る度にそれを避ける。そしてまた近付き、また避ける。そう、一羽のアゲハ蝶は水にかからないようにくるくると回って遊んでいたのである。普段そんなことには目も向けない私であるが、そのときだけ魅入ってしまった。アゲハ蝶が、水辺で遊ぶ幼き子どものように見えて愛らしかった。いつ水にかかってしまうかとヒヤヒヤしながら、親心で眺めていた。

 キラキラ輝く真珠たちの上を、緑のカーテンの上を、ホースからあふれ出る透き通ったアーチをくぐり抜けるアゲハ蝶は、本当に美しくも神秘的に見え、魅了されてしまった。蝶は成虫なのでそれ以上の成長はないけれど、きっと親も、そのときの私のように見守っているときがあったのではなかろうか。虫と人間とで全然違うけれど、根本的なところはどこか一緒で似ているものである。そう考えてぼうっと眺めているうちに、蝶は風に乗って飛び立っていった。

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