その【嘘】が【本当】だと、俺は知っていた。
※この物語はフィクションです。
実際の人物・団体名等とは一切関係ありません。
物凄く短い話になっています。
もしも、この話の詳細が気になる方がいましたら、「あの日の君は泣いていた。」
を読むことをお勧めします。
気がつくと、俺は公園に居た。
目の前には女友達の、江西 三津がいる。
それしかわからない。
思い出せない。
少し記憶を探ってみよう。
・・・時は遡り、高三の春。
自分がどのクラスか、みんなが知ろうとして集まる。
俺はそれを後ろの方で見ていた。
すると1人、背の高い奴が前にいて困っている子がいた。
やれやれと思いながら、持ち上げてやる。
急に知らない奴に持ち上げられたら普通は驚き困ると思うのだが、その子はただ、「ありがとう!」と笑って振り向いてきた。
逆にこっちが困ってしまった。
クラスは違ったので、もう関わる事は無いと思っていたのだが、その子は毎日のように俺のクラスまで来て、ずっと話しかけてきた。
なんなんだろう...。
不思議だった。
でも何故か、懐かしさがあった。
最初は彼女が一方的に話しかけてきていたのが、だんだん2人で話すようになっていた。
昔から1人が好きで、いつも友達を作らなかった。
1人が心地よかったのだ。
でも彼女と話している時は、1人の時とは違った心地良さがあった。
彼女のカリスマ性は想像以上で、俺の周りにはドンドン人が増えていった。
毎日が、楽しくなっていった。
三津と出会ってから、俺の周りには笑いが増えた。
彼女には本当に感謝している。でも、そんな今になってもまだ、彼女が俺にあそこまで親しくしてくれた理由がわからない。
過去に会ったことがあるわけではない。同じクラスになったこともない。
それなのに彼女は、ずっと俺のそばにいてくれた。
今まで経験したことのないほどあっという間に、時が過ぎていった。
時について行くのが大変なくらいに。
夏休みが終わった。そう思っていたらもう冬休みになっていた。
もうすぐ、この楽しい毎日は終わる。
そう考えると、無性に寂しく感じた。
冬休み最後の日、うちのポストに手紙が届いた。誰からとは書かれていなかった。ただ、
「今日夕方5時30分、丸々公園に来てください」
とだけ書かれていた。・・・
そうか。
俺は手紙でここに呼び出されて、
着いたらそこには三津がいたんだ。
でも話って何だ?うちに来て直接言えば良いのに。
三津はゆっくり息を吸うと、落ち着いた、真面目な顔でこう言った。
「好きです。私と、付き合って下さい!」
「え?」
(あの時の逆だ。)
驚きのあまり、腑抜けた声を出してしまう。
...告白、されたのか?
信じられなかった。今まで友達として一緒に居たのに、まさか告白されるなんて。
...ドッキリか?
そう疑ってしまうほど、意外だった。
こちらの反応を見た三津は、一転変わった雰囲気で話してきた。
「なんてね!嘘だよ。驚いた?」
「え?あ、う、うん」
対応しきれなかった。それは、展開の速さのせいだけではなかった。
俺が見たのは、笑顔で告白を嘘だと言う、いつも通りの三津の姿ではなく、
必死にぎこちない笑顔を見せながら、今にも泣きそうな目をした三津の姿だった。
それでようやく分かった。彼女があそこまで俺に親しくしてくれた理由が。
彼女は俺の事が好きだったんだ。
冗談ではなく、本気で。
何故俺を好きになったのかまでは分からない。
でも、彼女の潤んだ瞳が、
全てを意味していた。
彼女の本物の告白に対する、俺の答えは、
NOだ。おそらく彼女もそう悟ったのだろう。慌てて誤魔化したのが、
何よりの証拠だ。
できれば彼女には幸せになってもらいたい。
それでも俺が彼女と付き合わない理由が、ちゃんとある。
「何ぼけっとしてんの?早く行くよ!」
「あ、ああ。」
悲しいが俺には彼女に言える言葉が思いつかない。何も言えなかった。
夕暮れに沈む太陽は、
彼女の心を表していた。
最後まで読んで下さり、誠にありがとうございます。
恋愛についてはよく分からないので、
想像で書いてみましたが、悪いところがあれば、遠慮なく言ってもらって構いません。