帰還
花の船で、空を行く。
美子を、家族の元に送り届けた。
ゆっくりと手を振る、その表情は穏やかなものだった。
漆は、汰一を連れて、どこか新しいところへ行くらしい。
その内、一緒にまた花を撒こうと約束して、お別れした。
花の船を片づけて、この地の門を閉める。
かつてはいつも開かれていたが、いまはもう、心やさしい樹はいない。
瑠璃ひとりではとても受け入れきれないので、少し趣向を変えてみることにした。
瑠璃の好きな人、やさしい友だちを時々招いて、遊んだり、一緒に樹や花を植えたりする、そんな場所にすることにした。
そうして出来上がったものを、時々、船に乗ってばら撒きにいこう、なんて考えている。
ひとりになった。
そう思ったが、いつの間にか、客が来ていたらしい。
森の奥のほうから、かすかに声がする。
なぜか、なつかしいような。
森の奥へと、歩みを進める。
淡い光の差す、うっすら明るい道を、ゆっくりと進んだ。
やがて、森のいちばん奥についた。
そこには、かつての瑠璃の、墓がある。
狼がいた。
その金色の目から、ぽろぽろと、とめどなく涙をながしつづけている。
なぜ、泣いているの。
言葉をかける前に、この目からも、涙がこぼれ落ちた。
いつまで経ってもおさまらず、しまいには、嗚咽までもれる。
もう、涙を止めることは諦めて、そのままながしつづけた。
不思議と、心にこびりついていた痛みがほどけて、涙とともに、剥がれ落ちていくようだった。
やがて、いつの間にか涙がおさまり。
目の前が、明るくなっていく。
ああ。
なんだ。
あれは、わたしの大事な、大好きなお友だち。
久しぶりに、その背中に飛びついてやろう。
きっと驚く。
おしまい。
はやく背中に飛びつきたいものです。
ジャンル付け、一番しっくりくるのは
「意味がわかると怖い話」でしょうか。
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続き、というより、話は少し戻ります。
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