再誕の地
空が青い。
目の覚めるような青空の下、丸い箱を投げ捨て、傷ついた少女を抱きかかえた。
息はある。
だがか細い。俺の持つ道具では、治療できそうにない傷だ。
それでも、諦めるわけもない。
「たすけてくれ!」
力いっぱい叫ぶ。走る。
どこかにあるはずだ。
どこかにいるはずだ。
彼女をたすけられるものが。
「こっちだよ!」
声の主の姿はみえない。そ
れでも、着いていくに値する、力強さのこもった声だ。
声のする方へ、走る。
あたたかい風が、吹き抜けた。
気がつけば、それまでいたところとは、景色が変わっていた。
緑の豊かな土地だ。
若木から大木まで様々な樹がならんでいる。白や黄色の草花がしげり、樹も色とりどりの花を咲かせている。
その中に、青い目の少女が立っていた。
兄からいつも聞いていた。
これが、瑠璃、なのだろう。
兄のあの様子からしても、しんでしまったのだろうと、そう思っていたのに。
「綺麗でしょう。前は一本の樹に寄り添っていたのだけど、今度はみんなで植えたんだ」
そう言いながら、嬉しそうに顔をほころばせている。
「そんなことより! 彼女を、美子をたすけてくれ!」
消え入りそうな呼吸で、なおも生き続けている彼女を、瑠璃はその青い目でじっと見つめた。
「わたしの腕、わたしの脚の替えがある。それを使おう」
そう言って、どこからともなくそれらを取り出すと、おもむろに美子のからだにあてた。
不思議なことに、それは普通の手足のように、すっと彼女のからだに馴染んだ。
呼吸が深くなった。
険しかった表情がやわらぎ、彼女の命が救われたことを悟る。
「一体、何があったの」
事情を説明しようとすると、口を開く前にその手のひらで遮られてしまった。
その青い目で、俺と美子を静かに見つめた。
「なんてひどい! ぶちのめしてやらないと!」
次の瞬間には、地団駄をふんで怒っている。
「まずは、元気になるとして」
かと思えば、またどこからともなく水差しを取り出して、美子の唇へ差し出した。
「美子、あなたはどうしたい?」
静かに問うた。
しばらくの沈黙の後、美子がゆっくりと口を開いた。
「もう、こんなことのないように」
その答えを受けて、瑠璃はしばらく考え込んだ。
そして、今度は俺をみて、こう言った。
「船をつくってくれるかな。彼女が元気になるまでに」
瑠璃、登場です。
どうやって立ち直ったのか? それはまた別の物語にて。
続きます。
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