恋愛指南書
「彼女も忙しいんじゃないかなぁ。今までの話からすると、彼女もきちんとケイ君のこと好きだと思うよ。広い気持ちで様子みてあげたら?」
「ん・・・、そうだな・・・」
「ケイ君も大変だよね。毎日お仕事お疲れ様です。彼女のこともあるけど、明日もお仕事頑張れるようにお祈りしてるから、今日はゆっくり休んで身体の疲れとってね♡」
「ありがとう。俺・・・、最初からユウちゃんにしておくんだったかも・・・」
「・・・そんなこと言わないの!彼女に失礼だよ」
「ふ~~~~」
女は盛大に息をはきだす。
ニヤけそうになる口元を隠そうともしない。
今の顔を電話相手が見たなら、なんと言うだろうか。
まあそんなことはどうでもいい。
恋愛とは所詮だまし合い。
それでも欲しいのだから仕方がない。
―――手応えは上々。
「買って良かった♡」
女の手には『恋愛指南書』。
その手は15ページで止まっている。
まだまだ始まったばかり・・・。
*
「ほんとにこんなん買う人間いんの?一冊三万もすんだろ。こんなに薄いのに」
「それが売れてんだよな。口コミが口コミ呼んで。今度Ⅲだすつもり」
ギャハハハ――――――
「すごいなお前。なんでそんなに恋愛に詳しいの?」
「別に詳しいって訳じゃないけど・・・。高校のとき、学園のマドンナってゆうのかな~、無謀にも本気で恋しちゃってさ」
「あ~、それで色々研究したわけだ」
「まあそんなとこ」
「でもさ~、お前そんな努力しなくてもモテんだから何とかなったんじゃねえの?」
「それがさ、ほんとはいいとこまでいったんだけど・・・。そのうち学校で変な噂がたつようになって・・・」
「ダメんなったの?」
「うん・・・。最終的にはストーカー扱いされて・・・」
「お前それどうやって抜けだしたの?」
「今の彼女がさ、もともと友達だったんだけど、色々と慰めてくれるようになって・・・」
「あのラブラブの彼女かぁ。長いもんな~お前たち。最初紹介されたときはさ~、なんで?って正直思ったわけよ。けどさ、今の幸せそうなお前見てたら、女はほんと見た目じゃないなって思うよ」
「本当に優しいんだ彼女。思いやりがあって」
「いいな~。ほんと羨ましい。お幸せに!!!」
*
「うるさいのが帰ったら、急に声聞きたくなってきたな~」
慣れた手つきでスマホを操作する。
「あれ、通話中?この時間、いつも繋がりづらいなぁ。あとでかけなおすか」
目を離したすきに、パソコンの受信箱が1,2と増えていた。
「さっそくⅢの予約か~。情報早いなぁ。まあ誰かの役にたててるなら、ほんとに嬉しいことだよ」
受信箱を開くと、男の氏名で申し込みがあった。
―――本田啓斗―――
「ほんだ・・けいと、か・・・。高校生だったりして」
ほんのりと苦い懐かしい想い出が浮かびあがる。
が、想い出に浸るまもなくスマホの着信音が鳴る。
待ってました!!とばかりに耳にあてる。
「あっ、ユウちゃん?今なにしてたの?」




