3.魔法
「なんであいつはちょっと目を離した隙にいなくなるわけ?」
村の一番でかい家にあった麻袋に薬をたんまりと入れ盗む…寄付してもらう。ついでに剣と服も。
だって村人全滅してるんだしいいよね?貰える物は貰っとかないと。
雪彦に処置をしようと戻ると雪彦の姿は無く、ご丁寧に弓矢と長刀もなくなっていた。飛んで周りを確認したが雪彦の姿は無くあるのは護衛された馬車が違う方角に一台ずつ、右側に城壁付きの街が見えるぐらいだ。とりあえずさっき見つけた街に行く事にする。
「その前に魔法が出るか確認してみるか。ファイヤーボール…ウォーターボール…火の精霊よ我に力を貸したまえ!ファイヤーボール!………何で出ないんだよっ!糞ゲーかよ!」
『ざんねーん優斗君それじゃ魔法は出ませぇーんwねぇねぇ今どんな気持ちw?ねぇねぇw』
「なんかこう残念な感じだよ。てか誰だよ」
『君が盗んだ魔法書だよ』
「寄付してもらったんだよ」
『どうでも良いから早く袋から出してよ、キツくて嫌だからさ』
背中から袋を下ろし、しゃべる本を取り出す。装丁は黒で金で菱形のシンボルが描かれている。中には四角い文字が書かれていてなぜか読める。この本に疑似人格が付いていてそれが魔法を覚えるまでアドバイスをしてくれるらしい。
こんなやつが?
「とりあえずさ、魔法教えて」
『分かったよ。まず魔法ってのは意思と言葉を媒介としてこの世に変化をもたらす物で似たのが後二つあるんだ』
「その二つってのは?」
『杖と言葉を媒介とする魔術。魔道書と言葉を媒介とした魔道。威力は劣るけど道具が必要ない魔法が一番普及してるかな。それに魔道は才能がいるし、魔術は失われた技術で今は使用者が0に等しいかな』
「なるほど。で、魔法はどうやったら使える様になる?」
『魔力量と適正属性を量るために、第四魔法のtemis465番メジャーを君に掛けるよ。あと魔法は11階級あって数が少なくなるほど威力、難易度が上がって行くから』
「 temisと465番は、何?」
『 temisは聖の属性名で、火はhonos、水はposes、土はdaaras、風はrutos、闇はbakas、木=はderumes、雷はtoras。数字は各魔法ごとに振られた識別番号。この二つでどの魔法を出すか決定する。これが言葉の決定で、誰に、どこで、どんな風に展開するかをイメージするのが意思の決定』
結局魔法も暗記かよ…
『じゃあいくよ。temis465番メジャー』
手の中にある魔法書から白い光が溢れ出す。本が光っている間高校生の自分が言うのは何だが、どこか懐かしく凄く心地よかった。光が収まるとその感覚も消えて行く。
「魔力量はどうだった?」
『国家魔法師…国のお抱えになれるレベル。多分鍛えれば第二魔法まで使える様になると思うよ』
「それってどれぐらい凄いの?」
『人間が使えた最高位の魔法。とりあえず冒険者になって魔法をいつでも使える様に私が君を強くするよ』
「サンキュー、適正属性は何だった?」
『君が使える属性は基本属性の四つだよ』
「てことは火、水、土、風で合ってる?」
『合ってる。さっき弓を引いてたし第四魔法のrutos456番風矢なら練習にちょうどいいんじゃない?あの木を狙ってみて』
「分かった。rutos456番風矢」
頭の上に薄い緑色の矢が三本出現し一斉にロケットスタートを切る。一本は途中で元から無かった様に消え、残り二本の内一本は失速し地面に落下、最後の1本も命中するはずも無く木の上空を悲しく通り過ぎる。
うん。知ってた。そんな簡単に当たったら苦労しないよね東雲。
『これからは魔力の操作と魔法沢山覚えようか』
俺の魔法無双まではかなり時間がかかりそうだ。
頑張ります