革命の兆し④
手回し式の発電機と、発電を確認するための電磁石と木炭フィラメントを領主に売却。
発電・変電・蓄電など基本的な電気の知識をまとめた書類も添えたので、有用性を理解してもらえればここから研究が始まるだろう。
電気による遠距離通信があれば、それが都市内だけであってもかなり便利なんだ。こっちは採用してもらえると信じている。
モーターに関する知識の方は、ちょっと微妙。電車ができれば便利だと思うけど、モンスターのいるこの世界で安全性や保全関係の難易度が読み切れないし。鉄とか、金属材料はいっぱいあるからレールを作るのも不可能じゃないと思うけど、冶金技術はどうだろう? 俺は金属が専門じゃないからそっちは疎いんだよね。コークスぐらいは知っているけど、小説とかでちょっと知った程度の情報しか手持ちがないよ。
当たり前だが、簡単な知識一つを手に入れた程度ですぐに地球並みの電気技術まで辿り着く事はない。発電所だってすぐには造っては貰えないだろう。
だけど、それでもいい。
研究が始まれば新しい仕事に繋がるからな。有益な物がいきなりできると思うほど慌ててもいない。俺がやるのは選択肢を増やすところまでだ。
後は領主様のお仕事である。
ギルマスとしては電灯を建物内に設置したいという思いもある。なので風力発電を始めるのと、一部の部屋に電灯を用意させる。
工事は大変なので、完成まではかなり時間がかかるが、それでも夜更かししやすくなるね。ランタンの灯りも雰囲気は悪くないけど、そうしても薄暗いから視力が落ちそうで嫌なんだよ。
ところで、ギルドでも独自に何か研究をしてみたいと思う。
錬金術という地球からしてみれば謎技術もあるんだし、そこを地球の科学技術に応用させてみたら面白いのではないかと思うが。
「出来る事がほとんど無い……」
残念ながら、俺や桜花は低レベル錬金術師だ。たったのレベル2だ。作れる物も限られている。なので、少し実験をするとすぐにやる事が無くなる。
そして俺に出来る事が少なければ、他人に指示するにしても何をどう言えばいいのかも分からない。錬金術師に何が出来るか分かっていないと話にならないのだ。
開き直り、ギルド所属の錬金術師に色々と教えておけばいいか。
領主の所には電気関係の知識を出したのだから、別の知識にした方がいいかな?
まともに考えても分からないときは、手当たり次第に知識を書き殴ってみるか。
数学の公式とか俺には使い道が無い物が多いけど、きっと誰かが何か使える場所を探してくれるかもしれないし。
人、それを丸投げや思考放棄という。
今度は資料室に領主の使いが来るといった事態にはならなかった。
お互いに使い道の無い情報だと、どうしても価値が低くなるからね。何かやる事がはっきりすれば話は別なんだけどさ。