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北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
加速する世界
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新メンバーの候補者

 ゴラオンの方はまだ「これ」という人物を見付けておらず、人探しが中断されるのは助かったといった具合だ。

 ゴラオン自身、冒険者として相応に忙しい生活を送っている。友人の頼みとはいえ、いつまでも人探しにかまけていられないのも当然だった。

 なお、ゴラオンが『冒険家』『格闘家』といった一般的なジョブで人探しをしていたにも拘らず未だに候補者を見付けていなかったのは、イーリスに気を使って女性に限定していたかららしい。女性に伝手の少ないゴラオンには厳しい仕事だったようだ。



 そうなるとイーリスの方の候補者がどんな奴かが気になってくる。

 話を通し、会う約束を取り付けてみる事にした。

 彼女は教会でシスターをしているというので、俺の方が教会に足を運ぶ。


「ララ、です。よろしくお願いしますの」


 ぺこりと頭を下げた彼女は、神官服に身を包んだ女の子だった。

 年齢的には10代前半。俺より身長が高いが、これで10代後半は無いだろうという幼い容姿の少女だった、が。


「ララは私よりも年上ですからね」

「嘘だっ!!」


 なんと、彼女は19歳だった。

 たどたどしい喋りと小学生と言っても通じる外見だったため、全くそうは見えない。意外すぎる事実に思わず俺は口から本音を()く。

 そしてその結果、俺はララを怒らせてしまった。


 ララは幼少期から成長期までの間をスラムで生活しており、その間の栄養不足で発育不良に陥った過去を持っていた。シスター見習いになったのが3年前で、つい最近シスターになったばかりだという。

 そのララにしてみれば、発育不良を指摘されるのは育ちの悪さを指摘される様で気に入らないらしい。


「分かっているのです。ララは、どう見ても大人に見えませんの」

「あー、その。すまん。ごめんなさい」


 分かっていると言ってはいるが、納得をしていないのはどこから見ても明らかなほど彼女はお怒りだ。子供のように頬を膨らませ、不服そうにこちらを見ている。

 頭を下げ謝ってみせるが、ララは機嫌が悪いままである。

 甘い物でもあればいいのだろうが、残念ながら俺はそういった甘味を携帯していない。ご機嫌を取る手段は謝る以外になさそうだ。

 ……嘘でも「ララは大人である」と褒めるというのは、どう考えても悪手だと思うし。



 その日の面談は俺が謝り倒すだけというあまり良くない結果に終わり、イーリスに事前に教えておいて欲しかったと愚痴をこぼすが、


「先に教えたら面白くありませんから」


と、素敵な笑顔で答えられた。


 あれはどうやらララと付き合っていく人間が一度は通る道の様だ。

 その後にイーリスはララが見た目ほど怒っていないと言われ、怒っていたのは演技だとネタばれをした。

 イーリスもそうだが、あのララって子も面倒そうな性格をしている。俺は完全に騙された形である。


「にゃあぁぁっ!!」


 今度会ったらララに梅干しの刑(こめかみグリグリ)だな。

 俺はイーリスのこめかみに拳を当ててグリグリしながら、密かにそう決意した。

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