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北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
竜召喚士と人造魔術師
80/320

人造魔術師④

「目が覚めたか?」

「ますたー? あれ? え?」


 桜花がようやく目を覚ました。

 俺はそれまでの緊張が解け、深い疲労感に包まれるが、それでも微笑み桜花の頭を撫でるぐらいはしてみせる。


「夢?」

「何が言いたいのかなんとなく分かったから、夢じゃないと言っておこうか」


 桜花は現状が全く理解できていないようなので、端的に事実を伝えておこう。


「桜花。お前はダンジョンで無理をして、一度死んだんだよ――」





 魔法生物は毎日MPを供給しないと普通に死ねる。

 言い方を変えると、生きていく為にMPを消費しているわけだ。ただし、そのMPはステータス上に表記されるわけじゃない。だから俺の把握できないMPという訳だ。

 ゲーム上は使う方法の無いMPだったわけだが、桜花は自爆覚悟でそのMPで魔法を使った。


 そして、死んだ。



 一度死んだ桜花は、例えばそのまま『人形遣い』が何かすれば生き返る、などという事はない。そのまま素材扱いして新しいホムンクルスを作る事も出来ない。

 死んだら、それまでだ。ゲーム的にも例外は無い。


 だから、教会で生き返らせてもらったのだ。

 3万Gを使って。


 財政に余裕ができた、ダンジョン初心者を無理やり連れ歩いた、連携も何も無い状態だった。

 それらの理由がかみ合っていたので、蘇生の予約をしておいた。


 保険、無駄になる出費。そうは思っても「いざ」という時に備える気持ちで頼んでおいたのが良かった。

 大赤字になってしまったが、ここで桜花を失うよりはずっといい。借金をしたわけでもないし、また稼ぐ事ができるのだから問題ない。





「すみません、マスター」

「謝る必要はないぞ、桜花。桜花があそこで無理をしたからこそ、俺もここに居るんだからな」

「でも……」


 3万Gという大きな出費、大事なお金を使わせてしまった後悔から俺に頭を下げる桜花。その眼には大粒の涙を浮かべている。

 だが、それを言い出せば謝るべきは俺だろう。なにせ、あの場で適切な行動を取る事ができなかったのだから。


 厳しい状況でも足掻いていれば何か()はあったかもしれない。

 だけど何もできなかった。何も言えなかった。

 桜花があそこで無茶をしてくれたから、あの戦いは生き残る事ができたんだ。


 それを責める権利など、俺には無い。ただ感謝すべきなのだ。



「蘇生後、1週間は安静にしているように言われている。また、よろしく頼むよ、桜花」

「はい……はいっ!」


 俺はもう一度桜花の頭を撫でると、ゆっくり休むように言ってから部屋を出る。


 桜花が居ない1週間。

 桜花が居ないからと言って何もしないって訳にはいかないからな。

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