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北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
竜召喚士と人造魔術師
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人造魔術師③

 相手の魔法が俺めがけて飛んでくるが、回避は出来ない。俺の後ろにはHPの低い桜花とミレニア、イーリスの3人がいるからだ。

 気合を入れ、楯で直撃だけは避ける。

 何度もダメージを受けて膝をつきそうになるが、ぐっとこらえてイーリスの回復を信じる。


 MPが尽きた支援も何もできそうにない桜花とミレニアの魔法使いコンビだが、それでも仕事はちゃんとある。


「石、拾ってきました!」

「お願いします!」


 俺にソフトボールぐらいの大きさの石を渡す係だ。

 俺は槍を持っていないしストーンゴーレムと正面から相対している訳では無い。やることは3人の壁になる事とホムンクルスへの妨害、嫌がらせぐらいだ。


 魔法を防ぐのを優先するが、相手の魔法だってそう頻繁に飛んでくるわけではない。それなりに間隔がある。

 俺はその隙をついて石を投げるのだ。


 ホムンクルスはDEXやAGIといった物理的能力があまり高くない。

 しかし、20m先の人間が投げた石ぐらいは回避できる。そこまで鈍くさいわけではない。

 が、それでも石を躱すために魔法を中断しなければいけないし、2体が並んでいればその後ろにいた奴に石が(あた)る事もある。そうすれば軽い骨折ぐらいのダメージを叩き出せる。


 俺の投石は威力はそこそこで、ホムンクルスのような脆い奴でも殺すためには急所に運良く中るか数を中てる必要がある。

 つまり、無駄ではないし有効な攻撃手段だが倒すまでに時間がかかる。

 戦力比が2対5ぐらいなのでしょうがない。



 あまりに時間がかかるので、マリーがゴブリンを殲滅するのが先だった。


「マリーを≪送還≫、≪召喚≫ティナ! 頼む!」


 マリーは満身創痍であったが、ゴブリンを何とか一人で殲滅してくれた。

 俺のMPはかなり減ってしまったが、それでもあと1分ぐらいなら維持できるので、それに賭けて入れ替えを行った。

 マリーをそのまま使わなかったのはマリーのHPの減り具合と、位置関係とAGIの差だ。ゴブリンの所にいたマリーがホムンクルスの所に攻め入るより、俺がティナを召喚した方が早かったのである。そしてティナは素早さ、AGIが高いので何かと都合が良い。


 ティナがストーンゴーレムを避けて敵ホムンクルスへと襲い掛かる。

 ついでにゴーレムと戦っていたサイファさんが、ティナの参戦で運良くできた隙をついて2体目のゴーレムを撃破する。これでゴーレムは残り1体だ。





 これで勝てる。


 戦況が大きく変わり、こちらの優勢はほぼ確定した。

 サイファさんは残るゴーレムを難なく撃破できるだろう。

 ゴブリンはもういない。

 ホムンクルスもティナが数を削ってくれるし、相手のMPだってそろそろ底を尽きるだろう。こちらの回復も限界だけど。


 そこで、俺は気を抜いてしまった。

 まだ戦闘中なのに油断したのだ。



「マスター!!」


 桜花の叫び声が響く。

 後ろを見れば新たな敵の姿が見えた。50mほど後ろ、いつの間にやら回り込まれていた。


 現れたのは、ホムンクルスが2体。

 たったそれだけである。


 だが、こちらも打つ手が無い。

 ヤバい。

 そう思っても頭が働かない。



 呆然とした俺に、指示が来ないだろうと判断した桜花が敵に向けて走っていく。


「桜花!?」


 何をしようとしているのか、全く分からない。

 桜花の持っているスキルで打開できる状況じゃない。そもそも桜花のMPは尽きている。HPはあっても肉壁にもなれない桜花が何をしようというのか?


「≪フレイムバースト≫!」


 桜花のMPはもう0だったのに、桜花は魔法を使って後ろの敵を撃破する。そして、桜花はそのまま倒れる。

 俺は何が起きたのかと混乱するが、混乱が一周回ったのかすぐに桜花が何をやったのか理解した。


「MPを無理やり引き出したのかよ!」


 MPは魔法生物の生命力の根源。

 桜花は自分を維持するための、使えないはずのMPまで無理矢理使い切ったのだった。

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