人造魔術師②
サイファさんは、普段なら今よりも厳しい戦いをしているらしい。
それが可能な仲間を連れているので、苦戦などまずしない。慣れた作業なので楽勝である。
しかし彼が今連れているのは俺たち。
明らかに格下の連中である。
もう2レベルほど上がれば同等の戦力になってみせるのだが、今はそれも難しい。と言うか無理だ。
おかげであり得ないほどの苦境に追い込まれている。
「≪ファイアジャベリン≫!」
「≪プロテクション≫」
桜花がMP効率を考え、小技の魔法で相手のMPを削る作戦に出た。
≪ファイアジャベリン≫はMP消費が少ないものの、威力は結構高めだ。火属性の魔法は他の属性よりも攻撃魔法の性能がいい。
そして≪ディスペルマジック≫は聖属性の、わりと高難度の魔法である。当然消費も大きい。
手数という意味では押されているが、MP勝負で勝つのはこちらになるだろう。
と、思っていた時期もありました。
相手はすぐさま≪プロテクション≫という水属性の単体防御魔法に切り替え、低コスト対決に持ち込んだ。
結果だけ言えばダメージは多少通るけど威力が減衰した事で致命傷には届かず、相手の余力は削れていない。駄目駄目である。
「なら、これも追加だ!」
俺はストーンゴーレムの間に敵ホムンクルスへの射線を見つけたので、投槍による嫌がらせを敢行。
攻撃手段を失うだけでなく≪カバーリング≫する余力を削るので防御はその分手薄になるが、それでも攻撃こそが最善と信じて槍を投げた。
すると相手の意表を衝けたのか、運よく≪ディスペルマジック≫担当のホムンクルスの頭蓋を貫くことに成功する。一撃必殺である。
「よくやった!」
サイファさんの称賛の声。
しかし、現状はまだ予断を許してはくれない。
ストーンゴーレムは2体が健在で、ホムンクルスに至ってはこれが初撃破。ゴブリンはそろそろ壊滅させられそうだがマリーの召喚限界も近い。
サイファさんの≪斬鉄剣≫も使用回数に限りがあり、リソース的な問題でゴーレム2体を倒したその後は普通の攻撃しかできなくなるだろう。
「≪ファイヤーボール≫!」
「≪ウィンドブラスト≫」
「≪プロテクション≫」
「」
ここでもう一度魔法合戦。
今度は相手の防御よりもこちらの火力が上回る。更にホムンクルス2体を撃破。
だが、しかし。
「すみませんマスター。MPがもう……」
「うちの子ももう無理です! 交替です!」
桜花とフェアリーもMP切れになり、魔法戦用フェアリーは送還されて偵察用のフェアリーが召喚される。
こうなると相手の火力の方が問題だ。
「≪ファイアジャベリン≫」
「≪カバーリング≫!」
ここにきて相手は火属性魔法のホムンクルスを投入する。今までは防御主体でこちらの消耗を狙っていたのか、温存されていた奴だ。
俺は桜花を守るべく、楯で守りを固めつつダメージを自分に集中させる。
魔法の抵抗には成功するが、火属性の攻撃魔法はダメージ半減しかできない。これが魔属性だったらダメージキャンセルもできたのに。
「『治癒の薬』です!」
痛む傷はイーリスの回復でどうにかするとして、ここが正念場と俺は気合を入れた。




