装備更新
せっかくの資料室が領主命令で封印されました。
ギルド内限定で有料でも、簡単にジョブやスキルの情報が閲覧できるのはよくない事のようです。
その辺の説明をされ、二度とやらないようにお叱りを受けました。
ですので「じゃあ資料はこのまま破棄します」と言ったら押収されそうになったけど、資料は全て灰になりました。専用の魔法紙を使ったので、俺が何かしなくても部屋から持ち出した時点で資料が灰になるように仕込んでおいたのです。知らなければ、気が付かなければ対策取れない事ってありますよね。
いや、さすがに持ち出し対策ぐらいはしていますよ？
俺のせいじゃないでしょうに。
それにですね、俺にはやらないように、ギルド内ですら情報公開をしないように言いつつ、自分たちは情報をちゃっかり得ようというのはダブルスタンダードではないでしょうか？
「……報酬を支払いますので、ご教授願えませんか？」
「プラス、資料を灰にした分の弁償と、こちらが資料を持つ事の許可をください」
「分かりました。上にはそのように報告しておきます」
資料にはジョブとスキルの因果関係、効果的なパーティを組む為のジョブの組み合わせ、大軍運用の時に使えそうなスキルの組み合わせ、そういった考察も付けて説明していた。
口伝で情報が残っているだけではこういった戦略・戦術研究は出来ないだろうからね。領主側も欲しい情報だろう、たぶん。
ジャニスさんとの交渉の結果、情報料＋慰謝料＋損害賠償＋端数調整で１２万Ｇほど貰った。
ウハウハですな。一気にお金持ちになった気分だ。
今の俺の手取りは月に６０００Ｇぐらいなので、２年分にも満たない金額なんだけどね。日本なら１０００万円の臨時収入に近いかな。我ながら高給取りになったものだ。
いや、資料室からの収入もあるから、今の月収ってもっとあるか？ でも、あれは一時的な収入だからなー。
お金がたくさんあるので、装備の品質をツーランク上げてみた。
どこぞのオンラインゲームのような「鉄の剣＋９９」のような物ではないけど、「高品質な鉄の剣」というような装備は売っている。名前の後ろに数字が付くんじゃなくて、名前の前に「高品質の」と付くわけだ。
ＴＲＰＧ時代のデータだと、ダメージ＋１と耐久力＋１の効果があったけど、こっちではどうなんだろうね？ 俺は錬金術師であって鍛冶師ではないので、装備の細かい情報が見れないのだけど。
あとは「簡易魔力付与」という処理を行ってもらい、霊体などの非実体系モンスターの対処ができるようになった。
武器だとダメージが与えられるように、防具だと防御力によるダメージ減少が有効になるので、そのうち意味を持つだろう。
今のところはそういったモンスターが出てこないので出番が無いけど、いつ出番があるか分からないし。出来るときに備えるのは大事だと思う。
「あの、私の分まで用意してもらっても良かったのでしょうか？」
「いいよー。早めに使いだして、早めに手に馴染ませた方がいいからね。やっぱり装備は使い込んでナンボでしょ」
装備に関してはイーリスを含む４人分、全員の物を更新した。ジョブ解放枠というかお手伝いさん枠のラスト１人に関してはスルーだけど。
一緒に行動するなら装備の質は統一した方がいいと思う。基本、パーティの資産って扱いにするわけだ。
恐縮するイーリスだけど、仲間が弱いと守る方も大変だ。少しでもいい装備を身に付け、こちらの手間を省いてもらいたい。
なので何を言われようといい装備を使わせる。
なお、イーリスのジョブは『戦士』２レベルに『荷運び』『機織り職人』０レベルだった。
≪アイテムボックス≫持ちが増えるのは素直に美味しいね。まだ使えないけど。
「しかし、なんで『機織り職人』？ 『荷運び』は武具屋の仕事を手伝っていたからだろうけどさ」
「……お母さんから刺繍を習っていましたが、その、私、上手くなくて…………。料理や掃除よりも練習に時間をかけていたからだと思います」
「……そっか」
武具屋は生産ではなく販売担当なので、『鍛冶師』が付かないのは分かっていたけどね。
『機織り職人』とは、また『戦士』と相性の悪い組み合わせになったなぁ。
