パーティ解散③
俺は桜花の提案に、脊髄反射のごとく思考ゼロで返事をする。
「いや、普通に駄目だろ」
メイドサーヴァントの本領は家のお仕事。戦場ではないのだ。
戦場に連れて行くにしても後衛の方が得意だし、前衛が欲しい俺としては選択肢に入れる気にならない。
ノータイムで断られた桜花は、傍で見てよく分かるほど気落ちした。
「そう、ですか……。誰もがあの子たちのように戦えるわけではありませんよね」
「あいつらか……。悪いが、中層以降であいつらを戦わせる気はほとんどなかったよ。だって、メイドさんだし」
戦闘系のジョブを持っていようが、メイドさんはメイドさんなのである。どうせ任せるなら家事全般をやらせたい。あとはお弁当。
レベル10のジョブ『メイド天使』まで育てれば魔法戦の主力として使う事も出来るんだけどね。それまで戦闘能力に期待してはいけない。
……そう言えば「『メイド天使』ってなんだよ!?」、初めてそのパワーワードを聞いたときにそんなツッコミをしたのが懐かしい。
桜花たちにもメイドサーヴァントのジョブ特性について軽く説明し、『人形遣い』以外では戦力にするのが難しいと教えておく。
こういった基礎知識の共有は大事だ。
ついでに、『ホムンクルス』は魔法戦にかなり期待ができる種族であることも教えておく。
真価を発揮する為にはやはり『人形遣い』が必要だが、それでも『ホムンクルス・レンディア』側のジョブチェンジなら俺と組んでも普通に戦力としてカウントできるのだと。『プラーネ』側だと難しいんだけどねー。
仲間へ一通り魔法生物の説明をし終えると、俺はもう一人の仲間を迎えるためにギルドの受付に向かった。
俺はギルドの受付で伝言を頼むと、その日の夜に集められるだけ集めたギルドの代表者らとの、話し合いの場を設けた。
「――と、いう訳で、皆さんのギルドの中から一人ずつ、週に1名を交替交替でジョブ解放してみようと思います。早い段階でその有用性を言葉ではなく、現場の経験として実感してもらうのが狙いです。やっぱり、実際にジョブを増やしてみる事でしか分からないものもあると思いますからね。
リーダーを優先するもよし、有望な新人に枠を譲るもよし。判断はそれぞれのギルドにお任せします。
開始の時期ですが、この場にいないギルドとの調整もありますので、2週間後からのスタートとしますね」
俺がやっているのはジョブ解放関連の規制緩和による、イーリスのジョブを解放することへの不満回避だ。
何の実績も無いイーリスを起用した理由は、単純にメンバー欲しさと、そのメンバーを俺好みにビルドするというものである。完全に私的な理由だ。
ジョブ解放はギルドへの貢献度を考えて、貢献度の高いクランのメンバーのみに行う事にしている。
それなのにただの新人のジョブを解放すればジョブ解放待ちの他クランが不満を持つだろうから、その不満回避をしないといけない。
メンバーの一人を固定せずに連れまわすのは、その為の餌といっていい。
「質問だ。週に1クラン、1名だけの縛りはどんな理由だ? 別に、クラン1つにつき代表者1人をジョブ解放するだけなら1日もかからないだろう?」
別に、ジョブを解放するだけならパーティに登録してすぐに外すことをすればいい。
ただ、それだと一つ問題が出るのだ。
「ジョブ解放を貢献度別にした理由はそのクランの見極め、もっと言えばそのクランの人を信頼できるかどうか知らないからです。信頼できるかどうかを貢献度の形で見極めたいわけです。
1週間の共同探索は、その見極めの為と思ってもらえればいいでしょう」
「そうか。了解した」
変な人間を何も考えずにジョブ解放したら、後が大変だからね。
もしもジョブ解放後に何か起こしそうなら事前に対処しておきたいのさ。
その後もいくつかの質疑応答を経て、話し合いは恙なく終了した。
さて、ゴラオン達の方はどんな感じかな?