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北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
竜召喚士と人造魔術師
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ダンジョン中層②

 気分的にはただのルーチンワークでしかない。

 もっとはっきり言ってしまえば、俺はこれを命の係った戦いだと認識できない。


「ゴラオン!」

「応!!」


 ストーンゴーレムの相手はゴラオン1人で大丈夫だ。

 こいつは魔法が苦手なモンスターだが、動きが遅いのでゴラオンが武器をハンマーに持ち替えるだけで、ソロで対処が可能だ。


「一撃で!」


 その間に、後ろにいたホムンクルスをキュロスが射殺す。

 ホムンクルスは物理攻撃に弱いので、≪急所撃ち≫で喉を狙えば一発だ。ちなみに桜花も同じ弱点を抱えているので、中層では俺とか『騎士』のジョブ持ちが近くにいないとヤバかったりする。


 俺は空中戦のティアではなく、地上戦も得意なマリーを召喚して敵の後衛に突っ込ませている。

 ストーンゴーレムの数が多ければそちらに回すけど、今回の敵は後衛の数が多いので、そちらを早めに処分したい。



 なお、桜花とミレニアは待機である。連戦が前提のため、MP、余力を残すに越した事はないのだ。





 戦闘が終わって、ホムンクルスやストーンゴーレムから核を取り出す。

 核は大した大きさではないので、数を集めても荷物にならない。


 それよりもストーンゴーレムの身体に使われていた石材の方が重要で、特に大きい物を中心に、いくつか回収しておく。

 この辺りは常設依頼のように、いくらあっても売れる品の一つだ。『荷運び』の≪アイテムボックス≫が無いと回収できない品の一つだし、グランフィスト周辺には石切り場が無いので高値で売れる。


 ノルマだったホムンクルスの核も大量に手に入ったため、俺の機嫌はかなり良かった。



「なぁ、なんて言うか、最近はつまらなくないか?」

「お金になる物がいっぱいですよ? 何か問題あるのですか?」

「ああ、分かる。油断って訳じゃないけど、真剣味に欠けるよな」


 野営の時。俺と桜花が休憩し、残る3人が不寝番をしていた時の事である。

 俺はテントの外から聞こえる声で、ふと目を覚ました。


「そうですか? 危険は少ない方がいいってレッドさんが言っていましたけど」

「リーダーの発言は分かるけどさ、格下相手に小銭稼ぎって気がして、どうにもやる気が出ないんだ」

「おぅ、俺もだ。俺も、もっと自分に相応しい敵と戦ってみたいって気持ちになるんだよな。なんか、こう、ぬるい相手とばかり戦っていると、腐っていくようでさ」

「えー。怖いのは嫌ですよ、私。それに、小銭って額じゃないですし。私、ギルドに入る前の10倍は稼いでいますよ。……元が少なすぎるだけですけどねー」


 3人は、ここ最近のダンジョン探索について話し合っていた。

 男2人はもっとリスクを背負って大きく稼ぎたいというか、もっと冒険をしたいと考えていた。

 女1人、ミレニアは現状のままでいいようだ。稼ぎも悪くないし、無理をする必要もないと言っている。



 ゴラオンの言いたいことは分かる。

 こいつは常日頃から戦う事ができるからと、厳しい戦いの中で自分を鍛えられるからこそ、ギルドに入ったような奴である。もっと上を目指すのは当然だ。

 キュロスも同じ男だし、同類としてゴラオンの気持ちが分かるのだろう。


「無限湧きでも見つからないかなー?」

「中層の無限湧きは駄目ですよー。終わりが無いから、戦う事になったら死ぬって言われてるじゃないですか。

 ゴブリンとは違うんですよ、ゴブリンとは」

「それでもなー、総合7レベルだっけ、今の俺達。適正レベルだって話だけど、だったらもうちょっと戦い甲斐のある相手が居てもいいと思うんだけど」

「同感だ。折角力を手に入れたというのに、振るい甲斐が無い、振るう必要のない相手ばかりでは宝の持ち腐れでしかない。俺達に相応しい戦場は、ここではない」


 こんな話をしているのも、俺が眠っていると思っているからだろう。

 直接言うほどではないが、俺は皆から少し不満を抱えられてしまったようだと、思わぬ形で知ってしまった。



 ゴラオン達はまだ若い。会社勤めではないが、毎日毎日、同じことの繰り返しでは駄目なのだろう。

 だからと言って性急に進むつもりはないので、当分の間はこの不満を抱えたままでいてもらうしかない。ダンジョンで先を急ぐと、下手すれば死ぬのだ。


 せめてあと1レベル、セカンドジョブがジョブチェンジするまでは地道にいこう。

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