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北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
冒険者ギルド
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幕間:事件の裏側

「クソが!! 戦争だ!!」

「NPCどもをぶち殺せ!!」


 むち打ちの刑によりボロボロにされた自分たちのリーダーの相川。その姿を見て日本人たちは激高した。怒りに任せ、殺し合いも辞さないと叫び声を上げた。

 だが、そんな彼らを相川本人が止める。


「ここまでは計画通りだ。何の問題も無い。予定通りに事を進めるぞ」


 この世界、一瞬で傷を治す回復魔法があるのでむち打ちなどの刑罰も地球とは違った意味合いを持つ。中には自分で怪我を治せるものもいるため、ただ苦痛を与える以上の意味は無い。

 今回はそれ以上の罰が来ない事を事前に調べてあったからこそ、相川はわざと不敬罪に問われたのだ。


 全ては領主を油断させるためである。

 全く意味が無いかもしれないが、打てる手は全て打つ、上手くいけば儲けものといった考えで相川は動いていた。

 無論、領主が無法にも相川を殺すかもしれない、その可能性すら考慮したうえでの行動だ。





「それにしても……領主の提案を受け入れても良かったのでは?」

「ですな。食糧の備蓄は危険な水準にあります。一つでも供給元が増える方が安心できるのですが」

「その件はもう決着がついていただろうが。今更蒸し返すな」

「しかし、仲間の不満を抑えるのも難しくなっていまして。思った以上に溜まっているようなのですよ……」

「それに相川さんが怪我をする必要も……」


 相川が戻ったことで日本人の幹部クラスが集まり、今後の予定に付いて確認をする。


 この集団の基本方針はダンジョンの攻略と日本への帰還を大々的に謳っている事もあり、それなりのまとまりを見せてはいる。だが、食糧の購入ができないという日本にいればまず有り得ない状況に置かれた事もあり、その結束にヒビが入り始めている。

 最初に出た意見はそういった不満を抑える役をしている者達から出たものだ。中には相川が酷い目に遭う必要など無いという、仲間を気遣った意見も出ている。


 彼らの困難を他の者が理解していない訳では無い。

 しかし、計画の露見する可能性を考慮すると、領主側と下手に繋がりを作るわけにもいかず、断る以外の選択肢が無いのも事実であった。

 裏工作で散々叩いておきながら、謝罪も何も無しに協力しろと言われたからムカつき断った。相川の組織の長にあるまじき振る舞いはそれが理由だった。



「だが、彼女らのおかげで“種”は撒けた。それに強奪した物資で少しは状況がマシになっただろう?」

「おい!」


 そんな不安を抱いた連中に、別の幹部が落ち着くように言う。

 だが、そのための言葉はここでも口にしてはいけない類のものであった。



 大規模な盗賊団。

 彼らが大々的な襲撃を行った理由は、日本人たちが彼らの物資を強奪したからだ。法を犯している連中相手であれば良心の呵責も無く殺せるし、奪えるからだ。

 そうして物資が足りなくなった盗賊団は強引な襲撃をするしかなくなり、それがあの結果に繋がった。


 彼らはジョブやスキルをフル活用しての盗賊団から盗みをやってのけたのである。

 その後の軍との衝突すら計画の内であり、盗賊団で領主軍の兵力を削るための手助けすらしている。

 それはもちろん、ほとんどの仲間にすら秘密の作戦だ。口にしていい話ではない。





「とにかく、だ。状況はこちらの推測通りに推移している。人形男(レッド)の行動は予想の斜め上ではあるが、許容誤差でしかない。

 では次に――」


 日本人たちの悪だくみは続く。

 彼らもまた、この世界で生き残るために全力を尽くさないといけないのだから。

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