表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
冒険者ギルド
62/320

冒険者ギルドの仕事

「ある意味ではいつも通りですね」

「太陽の下で暴れられる代わりに、手ごたえの無い仕事になるだろう」

「地上ですから水場も狩場もある、荷物は少なめでも問題ないでしょう」

「そうか、ダンジョン以外って事は現地調達が可能なんだったな。忘れていたぜ」


 ジョンさんとバランさんは自分たちのクランの中から、ダンジョン探索ではなく都市周辺の探索をする者を選んでいく。そしてその為の荷物の準備も。

 俺のところからは誰も出せないが、人数が少なすぎるのでそこはもう誰もが諦めている。

 だいたい兵士100人分のお仕事を割り振られたが、その分の賃金はダンジョンに潜るより美味しいです。じゃないと誰もやってくれないからね。



 俺はギルドの代表だが、基本的には実権を持たないお飾りである。

 なので、呼び出された先ではお仕事の大まかな枠組みについてだけ話を済ませ、細かい部分は専門のスタッフに丸投げした。むこうも交渉の素人の俺に全部がっちり決められたくないって気持ちがあったため、特に問題なく引継ぎできた。

 本物のお飾りに、俺はなりたい。お飾りなんだからと呼び出される事も無いぐらいに。

 利益だけはしっかり欲しいけど、こういった雑用が増えるのはあんまり嬉しくないんだよね。





 こういった依頼のような冒険者ギルドのお仕事に関わってみて、思った事。


 ラノベの冒険者ギルドの裏側って、どうなっているんだろうね?


 いや、冒険者が持ち込む素材とかって、量がランダムなんだろう? 売る方も買う方も、元の供給が安定しない事には使いにくくてしょうがない。

 スーパーでバイトしていた時に仕入関係に関わったことがあるけど、定期定量の納品物だけじゃなくて売れ筋商品を多めにし入れたり、時期が外れるからって普段より仕入れを減らしたり止めたりする商品があった。在庫をできるだけ少なくしようとする試みだけど、これは客を見た仕入れのコントロールだ。

 これを冒険者ギルドの事情に当てはめ考えると、生産元の事情で置ける商品が変わってしまうだろう? 店や客の事情は一切関係なく。それでよく売り続けられるなと思う訳だ。悪意ありでみると、冒険者ギルドがモンスター素材を一括して扱っているからできる事なんだろうね。独占禁止法が異世界には無いから殿様商売なんだ、きっと。


 逆に『北極星』というか『破魔の剣』『夜明けの光』は最初から持ち帰るモンスター素材の量をコントロールすることで対応している。

 「今はこれだけ受注があるから、この日までにこれだけ用意してね」と客先要望に応えるようにしているのだ。

 その結果、供給は需要によってコントロールされて無駄が無い。多少は品質で前後するものの売値が安定し、収入が分かりやすくなる。そして収入から冒険の計画を立てやすくなる。

 現代の卸・小売店に通じるやり方だ。中小ギルドが大手に対抗できない理由の一端である。


 最近は『荷運び』が増えたおかげで持ち帰れる量が増えたし、新規でお仕事の受注もやっていたよ。



 そうなると、付き合いのあるところから以外はお仕事を受けにくいという側面もある。

 売却ありきの素材回収だと、余剰素材の回収が≪アイテムボックス≫の容量的に難しいからね。

 余裕を全く考えていないわけではないけど、その余裕の隙間に「持って行かなくてもいいけどあったら嬉しい物」を持ち込んでいたりするし。オヤツとか。


 新規の仕事を受け付けるとしても、それは大口の定期依頼がほとんど。個人のちょっとした頼みごとを受け付けているわけではない。

 その手の依頼はそれぞれが個人の伝手でどうにかするものだし、そもそもいきなりモンスター素材が欲しいなんて言う奴は滅多にいないし。仕事として成立しにくい側面がある。

 あるとしたら、何らかの事情で素材を駄目にした商人が補充のために追加依頼をするぐらいじゃないかな。

 

 だから子供が小遣いを手に冒険者に仕事を頼むって事も無い。現代のイメージなら大企業の本社ビルに小学生が仕事を依頼しにアポなしで行くようなものだからだ。ずいぶん世知辛い話である。

 ……いや、そもそもそういった依頼って街の外で襲われている親を助けてほしいとか、病気の薬の素材を取ってきてほしいって依頼だよな。だったら行く先は衛兵の詰所か薬師ギルドの方か。そもそも冒険者に依頼するって話にもならないか。



 護衛依頼なども無い。

 商人が街から街へと移動するときに使う護衛は毎回固定だからだ。


 固定人員は報酬、給料が高くなるが、それ以上に安心や信頼を求めるとどうしても外注ではなく内部人員といった形になる。雇った護衛が自分たちの情報を外に漏らすスパイや直接的に襲ってくる野盗だったりしたら目も当てられないからね。

 大手ギルドがそういった仕事を受け付ける事もあるけど、それも普段の取引で付き合いのある身内の商人の依頼だけだ。自分たちを害すれば相手に大きな損があると分かっているから頼めるんだろう。


 実際、ラノベでもそういった展開はお約束の一つだったから警戒されてもしょうがないんだよね。





 こうやって考えると、この世界の冒険者って本当にダンジョンに特化しているんだな。

 俺としてはその方がありがたいけど、ラノベ的な展開、「俺TUEEE」もチートで成り上がりも無いだろうし。それが不満な奴らも出てくるだろう。


 そんな奴らが実際にいたとして、できれば俺を巻き込まないようにして欲しいね。

 俺は平穏無事に過ごしたいだけだし。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ