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北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
召喚術師の始まり
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模擬戦・リザルト

 ティナと模擬戦をしてみて分かったが、リアルスキルはそれなりに有効のようだ。

 俺がいきなりダンジョンに行った理由の一つに、日本での戦闘訓練を挙げられる。主に格闘メインだが、槍と楯を使っての戦闘もそれなりにできるわけだ。

 モンスター相手に格闘とか、リスクを考えると現実的じゃないんだよ。召喚士系クラスに就いたのだし、いずれはモンスターの陰に隠れるようにしたいものだ。



 それなりに戦えるのは朗報だが、いくつか気になった点がある。


 まず、体重や筋力の減少。

 子供のような体になったせいか、体の反応はそこそこいいのに、筋力が足りず一撃が軽くなっている。

 ダンジョンに出る雑魚モンスター、ゴブリンの能力が人間準拠と考えても、それなりに苦戦することが考えられる。

 体重の減少は防御面でも悪影響が強く、攻撃を楯で受け止めた時の踏ん張りがきかない。

 大きさは強さであり、重さは力だ。早急な改善が見込めないので、今の自分の身の丈に合った戦い方を模索する必要がある。


 もう一つは装備の耐久性能か。

 胸鎧は一撃も攻撃を受けていないので判断を保留するが、楯、バックラーはずいぶんボロボロになってしまった。槍の方も無傷とはいかない。

 ティナの攻撃が重かったというのもあるが、木の板に金属のふちを付けただけの軽量バックラーではこれが限界なのだろう。バックラーと槍は予備の購入も検討しないといけないか。余計な出費がかさむ。

 ……ゲームの時はスキルを使ったり使われたりしない限り劣化しなかったので、ゲームと同じ意識でいるのは危険だな。


 戦闘に関する懸念についてはゲーム知識を過信してはいけないが、それを基に実践というか実戦の中で自分を慣らしていくしかない面もある。

 一歩を踏み出さない限り生きていけないなら、覚悟を持って挑むべきだろう。



 そこまで考え、それにしても、と思う。

 本当にリスクを下げるのなら集団行動をとるべきなんだろう。というか、本来ソロは自殺行為に等しい。≪召喚術≫を持つ召喚士といえど、それは変わらない。常時召喚しっぱなしでいるわけではないので、そこは他の連中と何も変わらない。


 ただ、俺はモンスター以上に人間が怖い。

 リスク管理という面で言えばモンスターは相手も楽で、シンプルだ。戦って殺せばいいと、それだけなのだから。

 逆に人間相手では簡単に殺すわけにもいかず、利害の不一致から仲間であっても敵に成り得る厄介さがある。単純に敵と断じられるモンスターと違い、敵対的な味方とか仲良くできる敵とか、組織の力学や縁や恩に血縁といった絆とか、考えなければいけないことが多すぎる。本当に背中を預けられるのかといった信頼関係は簡単に作れるものではない。


 今は浅いところで小銭を稼ぎつつ、できるだけ人と繋がりを作る時期と割り切るしかない。





 宿の部屋で現状をまとめていると夕飯を食べるにはいい時間になったので、俺は食堂に向かう事にした。


 宿の食堂は多くの人でにぎわっている。

 昼食を食べる習慣の薄い現地住人相手では儲からないため、昼に行ったときはガラガラだったのだが。


 宿の飯は宿泊料とは別で、事前に頼む必要がある。宿の部屋の鍵を見せると、女給さんが笑顔で定食を取りに行った。

 この宿は宿泊客以外でも飯を食ったり酒を飲めるようにしているので、最大50人程度が一度に食事できるようになっている。酒食を求め集まった人間は雑多で、いかにも冒険者が好きそうな、この雰囲気があったから宿はここに決めた。


 俺は1人なのでカウンター席を選び、周囲の声に耳を向けながら、そしてテーブル席の彼らに視線を向けないようにしながら静かにメシを食う。

 女給さんの話ではジャイアントトードの肉入りシチューとパン、ぬるい麦酒(エール)のセットである。


 シチューは美味いが、パンは砂が混じっているし、酒だってぬるさで美味しいとは思えない。食事の質は近代以前といったレベルのようだ。現代日本人には満足できない質だろう。

 その分お値段は安く、一食3Gしかしない。朝夕二食に宿代込みで20Gは割安なのではないかと思っている。

 他の飯屋を調べた限り、一食5Gで同じぐらいの量を出していたし。


 飢えない、そこそこのお味、そして安い。

 駆け出し冒険者なら、この境遇をマシだと思うしかないんだろうな。



 なお、この日に分かった事は


・ 急に冒険者が増えて現地住人も困惑している

・ 新参の冒険者(日本人)の組織化が進んでいる


の2点である。


 他の連中にとって、見知らぬ誰かと組むリスクはソロのリスクを上回っているようである。

 そこは感性の違いなんだろうな。

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