上層突破
冒険者ギルド、その合併に関してはみんな問題ないと言ってくれた。
ギルド『北極星』は大きく生まれ変わる事になった。
変な話だが、ギルドが変わろうと俺達は特に何かすると言う事も無い。外部のスタッフが体裁を整えるだけだ。
何が変わるのかと言うと、俺達にも仕事――大手からしてみれば採算の取れないような簡単なものばかり――が割り振られるというだけだ。
主に中層ダンジョンで手に入る物、ホムンクルスやメイドサーヴァント関連の素材を集めるように頼まれる。
「レベル4もあれば中層に行けるだろう?」
他のギルドからはそんなふうに言われている。
だが、残念ながら俺達は未だ上層の冒険者。中層行きのパスは持っていないのだ。
そんな俺たちの現状に周囲は呆れるとともに「そんなものか」とあきらめの表情を見せた。ランダムダンジョンだけに、難易度が連続してハードモードになる事も稀にならあるのだ。運の悪い奴ら、それが俺達への評価である。
俺達が上層でグダグダしているのはあまりよろしくないと言う事で、『夜明けの光』からテコ入れが入る事になった。
「と、言う訳で、メンバーを半分に割って案内してもらう事になった」
「はぁ……」
別に俺はやりがいを求めてダンジョンに潜っている訳では無い。どちらかと言えば安定した生活のためにダンジョンに行くのだ。
だから大手の、有力な冒険者に寄生する形で上層をクリアすることに何のためらいも感じない。むしろ、今までクリアできなかった事に苛立っていたので、「是非!」と頭を下げてしまったぐらいだ。
中層で安定した探索を行えば、俺の考える幸せな冒険者生活と言うか冒険者引退が視野に入る。
中層に行けなければ支出に対する収入が足りず、赤貧生活を強いられる。
ならば変な意地を張るよりも先輩の力を借りる方がずっといい。
どうでもいい話だが、衛兵から出向していた2人、スピカ嬢とミューズ嬢はすでに中層に行っているそうだ。ゴラオン経由で聞いたよ。
下層の冒険者の手を借り、何の感慨も湧かないほど楽な戦闘でストーンゴーレムを倒し、俺達は中層へと向かう。
ストーンゴーレム戦はなんで今まで中層に行けなかったのかが分からなくなる。俺は桜花とキュロスの組み合わせで、お手伝いの3人の手を借りずに戦ってみたのだが、それでも危なげなく勝てたのだ。
俺が前衛、後ろから2人が火力を担当。それだけでハメ殺しの様な戦いを展開できた。動きが遅いから『騎士』でも回避楯ができたんだよ。
素材の方は≪アイテムボックス≫持ちが居たので全部回収した。
その人たちにしてみれば小銭稼ぎ程度の額だが、俺達にしてみればそれなりの額を稼ぐことができた。お手伝いの人たちは普段は同じ時間でヒト桁多く稼げるっていうからね。俺達も早く同じステージに立ちたいものだ。
そして、地上に戻って来た時。
盗賊を討伐しに行った部隊が半壊したと聞かされた。