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北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
冒険者ギルド
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M&A④

 俺たちの作った冒険者ギルドは、MMOなどのギルドシステムと同じである。

 単純に冒険者が集まっただけのギルドもあれば、生産職や職人を囲い込んでギルド内で色々と完結している所もある。特に大手は複数の業種が合併したようなコングロマリットの様な性質を持つ。

 これは民間企業のようなイメージで大体あっている。


 それに対しコンシューマーゲームと言うか、むしろラノベの冒険者ギルドはどうか。

 こちらは国家に縛られない世界規模だったりする事が多く、犯罪者でなければだれでも冒険者として受け入れるセーフティネット。初心者講習もあるよ。

 ギルドには依頼の書かれた紙が貼ってあり、それを受付嬢に渡して冒険に出て、依頼内容を達成したら報告して、報酬を得る。

 ランクシステムがあり、受けられる依頼には制限がかかる。また、高ランクの冒険者には指名依頼があったり、貴族に準ずるような特権があったり。

 あとは大規模なモンスターの集団が現れれば強制依頼として冒険者が拘束される事もある。

 超国家規模で書かれる割には、俺の中のイメージでは国営っぽい感じがするんだけどね。



 ジョンさんが提示したのはどちらかと言えばラノベの冒険者ギルド。

 他所から仕事を取ってきて、冒険者にどんな仕事があるかを提示し、報酬が得られるようにサポートする組織を作ろうというものだ。


 ギルドへの所属に関してのハードルは随分低めに設定する。普通の冒険者ギルドはそもそも身内限定の門前払いだが。

 実力評価制度とランク制度も導入して誰がどの仕事でも受けられるようにするわけではないと明記し、ギルドの信頼を得ようとするなど、色々と類似点は多い。


 冒険者が自分の実力を考慮して自分で自由に依頼を選べるようにする事はない。依頼の期限を考えて「お前、この依頼やっとけ」的なやり取りで仕事を割り振る形にするようだ。塩漬け依頼とか、普通に信用を失う事になるからな。

 ランクは信頼度であり実績を評価するが、実力は別枠で評価する。ステータスの確認ができる世界なんだからそこは当然かな。こういった点はラノベとは違う所かな。

 と言うかね、どこぞのラノベにあるような「高レベルが低ランク(低い実力評価)からスタート」なんて完全に無駄なシステムを作る意味が分からないし、「高レベルなのに低ランクでいる事に固執される」なんて我儘を言わせる理由もない。ゲームのシステムをそのまま流用するからそういった抜け穴が残るんだよ。そもそもランク上げに試験が絶対に必要とか、意味が無いと思うんだけどね。実力を示したのなら無試験でランクを上げても問題ないと思うし。





 冒険者ギルドの内容は大体理解できた。

 書かれている事を確認し終えると、俺は残るいくつかの疑問をぶつけてみる事にした。


「この内容が実現できると思いますか?」

「出来る出来ないではなく、やってみせるだけですね」


「基本システムを作る段階で『北極星(うち)』のメンバーでは人手不足の実力不足ですよね。そこはどうやって対応するつもりでしょうか?」

「当面は『破邪の剣』と『夜明けの光』で受け持つね。一番の目的は『北極星』の中に組み込んでもらってジョブ解放をする事だから。そういった実務は任せてもらって構わない」


「俺の名前がトップに来る以上、どうしても責任者って事で色々と面倒が舞い込んでくるんですけど?」

「いや、いきなり責任者にはなれないよ。実績が無い分、周囲は君の事をお飾りと思うだろう。そもそもレッド君が本当に実で責任者になりたいと思っていなければ問題の無い話だよね」

「それでも、何かあった時の詰め腹(生贄)にされる事になりますけど」

「実務単位で、当事者に一番の責任を取らせるルールを組み込むことで対処できるだろうね。最悪でも辞任で済むように手を打とう」

「信用しろと?」

「このやり取りを書面に残しておくよ。それでも信じきれないだろうけど、何も無いよりはいいだろう」


「俺の行動は制限されない訳ですか?」

「それに関しては、俺を見てもらえば分かるんじゃないか? 立場がどうであれ、冒険者としてダンジョンに挑むのは自由であるべきだ。

 それに、そうやって冒険者として活動してもらって実力をつけてもらった方が俺達にとって都合が良いっていう話でもある。やっぱり冒険者の象徴としてトップは最高の冒険者であってほしいとみんな願っているだろうから」



 打てば響くように、ジョンさんは俺の質問によどみなく返してくる。

 おそらく聞かれる事を事前に想定し、答えを用意しているのだろう。そして俺はその手のひらの上で転がされているだけなんだ。相手の想定を超える事ができずにいる。

 つまり、現状では相手の意見を否定する理由が思いつかない。


 冷静になって考えれば、この提案は受け入れてもよさそうだ。デメリットが少なく、メリットが大きい。

 感情面でも特に反対したい理由も無いからなぁ。ジョンさんはいい人に見えるし、俺を騙す理由はあれど、提案の内容を見る限り後は俺次第って形にまとめているから、騙されたとしても自分が悪いと思える所まで譲歩してくれている。



 なら、あとはみんなの承認を得るだけか。俺一人で決断していい事じゃないし、話を事前に通す方がみんなも納得できるよね。


「この話、前向きに考えさせていただきます。

 この場での即答は避けますが、俺自身は受け入れたいと考えています。みんなとの相談のうえ、明日の昼頃、そちらのギルドに返事をしに行きます」

「そっか、ありがとう。いい返事を期待しているよ」


 ジョンさんのような人でも少し緊張していたらしい。俺が話を受け入れるように考えていると言うと、ほっとした表情を見せた。


 さて、みんなに話を通さないとね。

 この前の反応を見る限り、特に問題は無いと思うけど。

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