M&A②
思わず食い気味に断ってしまったが、この対応に大人二人は苦笑で応じた。彼らも自分たちが無茶を言っていたのが分かっているらしい。
そもそも、『北極星』は弱小ギルドだ。実績も実力も無いため、運営が赤字になりかねないような状態である。
そんな時に大手と合併や吸収をすれば乗っ取られるのは目に見えている。俺は名前だけのお飾りに成り下がり、何もできなくなる。
「やっぱり駄目ですか」
「ま、そうなるよな」
彼らの目的はジョブの開放だろう。兵士や衛兵相手にあれだけ頑張ったのだし、彼らの情報網を使えば俺の事を知るのは容易いはずだ。
俺を直接取り込まなかったのは、「『北極星』ギルドメンバーならジョブ解放してもいい」という領主側の言葉があったからと思われる。体裁だけ整えて、実利を得る作戦だったようだ。
一部のメンバーだけを潜り込ませるなどすればギルドを残しつつジョブ解放もできるのだろうが、そうしなかったのは誠意なんだろうね、きっと。
バランさんは俺の即断を好ましいものと判断し、ジョンさんも俺の発言に怒った様子は無い。
下手をすると大手の冒険者ギルドと喧嘩になりそうな流れだったので、そうならなかったのは素直にうれしい。この手の話は体面やらプライドやら、感情論で話される事も多いからね。俺の対応はかなり拙かったんだ。
「グダグダと隠し事は性に合わないから手早く話を進めるぞ。
俺達はセカンドジョブと生産ジョブの開放がしたい。だが、『北極星』のギルドメンバー以外はジョブを解放してもらえないって事になっている。
例外を、と領主様に求めたが、今のところいい返事は貰えていない。
だからウチと破邪の剣の連中とまとめて合併、吸収される事にした。これならどっちかが『北極星』を傀儡にする事もできないからな。
それで、だ」
バランさんは現状を簡単にまとめると、こちらに質問をした。
「お前らは、ダンジョンにどんな姿勢で挑んでいる?」
その質問に対し、俺は少し悩んでからこう答えた。
「生活費を稼ぐ手段として、ですね。
出来るだけ命の危険を避けるように、安全に長くやっていく予定です」
「ダンジョン攻略をしようとしないのか? 聞いた話ではダンジョンを攻略すれば大概の願いは神様が叶えてくれるっていうのに」
「いや、命を賭けてまで叶えたい願いなんてありませんし。中層でそこそこ稼げれば、俺はそれでいいんですよ」
これが俺の本音である。
メイドトリオが居ない今、浅い所ではやっていけなくなるし、中層に潜って稼ぐ必要がある。
だが、更にその先、下層まで潜る気にはならない。神様に言ってまで欲しい物も特にないしな。幸せな老後、嫁さんやお金は欲しいけど、そのために死ぬ思いなんてしたくは無いのだ。
「冒険者以外の生き方をしようとは思わないのですか?」
今度はジョンさんが俺に問いかける。
「したいけど、無理でしょう?
異世界人が現地に馴染もうと思ったら相応の実力やお金が要りますし。庇護者もいない子供に無理を言わないでください」
錬金術師のレベルは未だに2しかない。駆け出しレベルのそれで生きていけるなんて、そんな甘い考えは俺の中に無い。
「ならばなぜ?
言っては悪いですが、我々との合併は大きな利益になるはず。そうすれば命を危険に晒すこともなく、安全にお金を得ることができますよ。
我々にも体面がありますし、レッドさんを騙すこともできません。下手をすれば領主様の介入を招きますからね」
それもアリと言えばアリなんだろうね。
安全にお金を稼ぐだけなら、傀儡になった方が早いし、楽だ。
「そこはもう、男の子の矜持ってやつですよ。一国一城の主となって、それでやっていけるのに誰かの傀儡になる。普通は選べないと思いますよ」
俺の言葉に大人二人はまた苦笑した。
彼らはギルドの名前を捨ててまでダンジョン攻略をしたいのだろうから、それより優先順位が高いものを持っている俺への対応に困ってしまったようだ。
互いに目指すものはバラバラだけど、それでうまくかみ合うかは別問題って事かな。
2人のギルマスは、この場はあっさり引き下がった。
たぶんギルド内で何か調整をしてから、また来るんだろうな。




