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北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
ギルド『北極星』
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新体制

 ジョブ関係の名簿を作るだけで1ヶ月半もかかった。ジョブ解放に面倒な人員追加があったのだ。

 と言うのも、『荷運び』ジョブの持ち主がなかなか集まらなかったからである。


 経験によるジョブ選びの結果を言えば、効果はあったと思われる。

 しかし確率分布に対する差から読み取れる程度の物であり、7%が10%になった程度の、3%の微増であった。

 38人が55人になると言えば聞こえはいいが、それでも予定していた数には到底足りない。だから職人や商人のところにいる丁稚、普段から荷運びをしている連中を徴用して数を揃える事になった。こちらはセカンドジョブに『荷運び』を持っていた者が20%もいたので追加は300人分で済んだけど。彼らはかなり細かく人が送られてくるので、どうしても時間がかかってしまったのだ。

 その際にすでにジョブが解放されている人間を雇っていた商会が見つかったのは本件とはあまり関係ないので割愛する。


 とにかく、そうやって『荷運び』で≪アイテムボックス≫持ちを揃えるまで俺は頑張ったわけだ。

 ……ダンジョンに潜る時間も確保できず。



 なお、プレイヤーがレベル1で選べるジョブの数は戦闘系が13種、生産系が8種である。


 『戦士』『格闘家』『弓兵』『騎士』『魔術師』『神官』『召喚士』『獣使い』『精霊使い』『人形遣い』『冒険家』『荷運び』『吟遊詩人』の冒険用ジョブが13種類。

 『鍛冶師』『錬金術師』『料理人』『機織り職人』『農家』『樵』『細工師』『鞣し職人』の生産ジョブが8種類。


 これらのジョブから必ず違うものを3つ、自分の好みにあった物を組み合わせてキャラクター作成をするわけだ。

 中には相性が悪い組み合わせもあるけど、そこは自己責任で。例えば『戦士(武器攻撃)』+『格闘家(素手攻撃)』はいい組み合わせに見えるけど、わりと無駄が大きかったりするんだよねー。

 これにジョブのランクアップもあるので、セッションの時にキャラクター作成だけで2時間ぐらいかかるのはお約束である。困った時のサンプルキャラ(テンプレート)って手もあるけど、キャラ作りが楽しいゲームだけに、サンプルを使う人が少ないのが「いつも通り」なんだけどね。



 あと、ジョブ解放後のレベルアップは俺がいなくても問題なくできたようだ。

 俺が名簿作成をしている間に何人かが経験値獲得を行い、セカンドジョブのレベルアップをしていた。経験値を手に入れた者の中には上手くできなかった者もいたが、わりと少数であり、俺の手は不要と。そう、結論付けられた。



 約1月半の大仕事。およそ6000人のジョブ解放。

 俺はその代金に14000Gという大金と、自由を手に入れた。


 ギルドメンバー以外のジョブ解放をしないという条件付きで。





 ようやくダンジョンに行けるようになったので、俺はギルドメンバーを集めてダンジョン行き前の摺合(すりあわ)せをすることにした。

 メンバーは俺、桜花、ゴラオン、そして新人2名の計5人である。


 新人の2人は俺が名簿作成をしている間に新ジョブのレベル上げを済ませていて、それぞれ『妖精召喚士(3)』/『荷運び(1)』/『細工師(1)』と『弓兵(2)』/『冒険家(1)』/『樵(1)』となっている。

 しばらくあまり顔を合わせていなかったが、以前見た時よりも血色がよくなっているのがよく分かる。日々の食事と訓練は偉大だな。



 『妖精召喚士』のミレニアは17歳の女の子で、冒険者歴は4年。

 正直、それだけの期間をダンジョンに費やしたのにここに来るまで3レベルだったのかとツッコみたかったが、自分も召喚モンスターも戦闘能力が低いので無理がきかず、半分以上はウェイトレスで食いつないでいたようだ。なお、本人申告では処女である。場末の食堂でウェイトレスをするは娼婦の役でもあるんだけど「買ってもらえなかったから」と言う理由でそちらの仕事をした事は無いらしい。

 セカンドジョブで『荷運び』を引いたので大げさなまでに喜び、この出会いが遅かった事に崩れ落ちたのが印象に残っている。『荷運び』ジョブもちはどこでも人気だからねー。


 外見についてはそこそこ可愛いが、そこまで目立つ事も無いタイプ。線が細いし身長140㎝ぐらいと小柄だし、埋没するイメージが強い。『弓兵』の派生(ランクアップ)で『暗殺者』があるが、そちらに成れたのであれば大成したかもしれないね。性格の方はまだ付き合いが浅いので断言できないが、自己主張の弱い内省的な子だと思う。


 ジョブの方は一回目のランクアップを済ませており、妖精(フェアリー)系に特化した『妖精召喚士』になっている。

 普段は妖精に偵察を行ってもらい、戦闘を回避しながら上層でひたすら小銭拾いをしていたという。妖精は魔法のエキスパートに育つので、実にもったいない話だと思うんだけど。



 『弓兵』のキュロスは15歳の少年で、冒険者歴は1年。

 入った当時はまだ2レベルだったとはいえ、腕は確か。単純に、矢を集めるのが大変だったのが低レベルの原因のようだ。

 金が無いので森に入って、木々を集めては矢を自作していたのだ。森に入ったのだから狩りでもできれば良かったのだが、それはグランフィストの狩猟ギルドに怒られるのでできなかったのが赤貧のもう一つの理由である。


 外見の方は細身であったが筋肉はしっかりついていて、弓を引くのに十分な体が出来あがっている。性格の方は口数が少ないけど実直な印象を受けた。細かいところはもう少し付き合いが深くなるまで分からない。


 ジョブの『弓兵』は、矢さえあれば近接職よりも大きな物理ダメージを出せる遠距離攻撃職だ。

 接近されると弱いけどそこは仲間がいればカバーできるし、隠密状態から攻撃を仕掛ける戦法もあるので単独行動が出来ない訳でもない。新規獲得したジョブの『冒険家』は他ゲームで言うシーフのような役割なので、いろいろと役に立ってくれると思う。



 2人に俺たちのジョブやその特性などを説明し、どのようにダンジョン探索をするべきか事前に話し合う。

 2人ともまだ俺たちとの距離感を掴みかねているので連携は上手くできないだろうけど、そんなものは回数を重ねて慣らしていくことだ。


 メンバーも新規募集をかけたのでいつまでこのメンバーで動くか分からないけど、頑張ってやっていこう!

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