『北極星』の新人
それから数日が経過した。
あれから何度かダンジョンに潜ったが、運悪く上層のボスは見付からなかったたが、別のところで何度も幸運に恵まれ、お金は30000Gまで貯まった。
そして期限が来たので出向組のうち女の子2人は衛兵として働くべく、元の職場に戻っていった。
そして唯一の男であるゴラオンはと言うと。
「衛兵辞めてきたから、これからはこっちで頑張るぜ!」
「いいのか、それ?」
「問題ねぇ! 団長からは許可を貰ってるし、むしろ「良く言った!」って喜んでたぜ」
「ええー」
なんと、『北極星』に入る事になった。
これは衝動的な話ではなく、ゴラオン自身が前々から衛兵を辞めようか悩んでいたのだ。
ゴラオンは衛兵の家系だからと衛兵の訓練をしてこれまでやって来たが、俺と冒険者をしている方が性に合っていると感じたらしい。衛兵の仕事が嫌だとかではなく、純粋に冒険者稼業にやりがいを感じた様なのだ。
アゾールさん側としては、身内がギルドにいてくれた方がいろいろとやりやすいと考えたため、この考えを全面的に支持。快く送り出したようだ。
まぁ、いいんだけどね。こっちも1ヶ月の間、付き合いのあった男が仲間になる事は嬉しいし。ゴラオンは優秀だし。
そして新規メンバーはゴラオンだけではない。
「ギルドマスター、本日からよろしくお願いします」
「こちらこそ。よろしくお願いします」
まず、30歳ぐらいの女性がギルドの雑役女中として雇われた。
この人はキュリィさん。緩いひっつめヘアの、美人な人妻さんだ。奥様だけど家計のために頑張るわけだ。給金は月に500Gも出すのでやる気を見せている。
キュリィさんはパリッとした出来る秘書風ではなく、ナチュラルな感じのゆるふわ系である。髪の色がピンクなので遺伝子仕事しろと言いたくなるが、癒し系だと思うよ。スタイル含め、色々と。
アゾールさんの紹介で来た人なので領主側と言うか体制側の人間だろうけど、基本的に信用していいと思う。
こういった事務系の人はこれからも増やしていく予定だ。
そして、もう2人。
「『妖精召喚士』のミレニアです」
「『弓兵』のキュロスです」
「「よろしくお願いします!!」」
ギルド開設の途中でやっていたメンバー募集に引っ掛かった、新人が二人。
どちらも16歳ぐらいで、ジョブレベルが3と、ソロでもそれなりに頑張ってきた人である。衛兵側で調べた話では、どちらも近隣の農村からの出稼ぎ組だった。
馬小屋で寝るような生活を続けて1年ぐらい。経歴を見ればなかなか逞しいように見えるかもしれないが、食事をまともに取れないことも珍しくない生活をしてきたため、16歳にしては小柄で細い印象が強い。
彼らは今までどのギルドにも入れてもらえずにいたが、今回は募集があったという事で一も二も無く飛びついた「食い詰め冒険者」である。
微妙に信用できない部分があるけど、こちらがちゃんと扱えば、信頼を積み重ねていけば大丈夫だと思いたい。
俺は個人的に、ラノベのようにギリギリのところを助けたら信仰に似た感情を抱かれるシーンに現実味が持てず、むしろ助けた側を利用していい目を見ようとする抜け目のない奴の方が多いと思ってしまう駄目な男です、はい。
打算とか利益と不利益とか、そういったものの方がしっかりした関係を作れると思っちゃうんだよ。命の恩人とかでも、だからと言って何かあった時に自分の命を投げ出せるかって聞かれると、首を横に振る奴の方が多いと思ってしまうんだ。
こうして新メンバーを加え、ギルド『北極星』は活動を開始することになった。
「ギルドマスター、ダンジョン探索の前に領主様の依頼を終わらせましょうね」
「……はい」