今後の話
「あははははははは!! 面白すぎるだろ、お前ら!!」
ダンジョンから戻ってから、1日の休養を間に挟んで結果報告に衛兵の詰め所に向かった。
一通り報告を終えると、アゾールさん大笑い。
「経験値は稼げるときに稼ぐ」というゲーマー思考がツボに入ったらしい。まぁ、死にかけた翌日にもう一回死地へ向かうなんて、普通の人はしないだろうし? いや、でも、あの場では全員が経験値稼ぎを選択したんだから、そこまでずれた思考って訳でもなさそうだが。
「まぁ、いい。
3人の育成はこれで終わり。約束通り、一ヶ月以内に仕事を終わらせてくれたわけだな。
これが約束の報酬だ。確認してくれ」
アゾールさんは笑うのを止めると、2000Gの入った袋を俺達の前に置いた。ゴラオン達3人とガナードさんのジョブ解放の代金である。
俺はその袋を受け取り、中身を確認してから桜花に預ける。
17日で2000Gのクエスト報酬か。中々美味しい。
「それで、今後の話だ」
居住まいを正したアゾールさんは俺の目を見ると、真剣な顔をして話を始めた。
アゾールさんの話を要約すると、『荷運び』ジョブの持ち主を優先して育てるため、まずはジョブの確認を優先して行う事になった。
衛兵・精鋭兵、併せて約6000人のジョブ確認を先行して行い、その中で有用な組み合わせとかを無視して、『荷運び』ジョブ持ちを優先して育てる計画を立てたらしい。
それなら出向トリオの育成よりも前にやるべきじゃないかと思ったのだが、そこは領主様側も何も考えていない訳では無かったのだ。
「『荷運び』ジョブを得られるかどうか、そいつの経験に因るものじゃないかって話が出ている。
6000人全員ではないが、100人を荷運びの仕事に就かせ、100人を魔法使いの所で勉強させた。これでセカンドジョブにどう影響が出るか、傾向を確認されるそうだ」
この世界の住人は、自分でジョブを選べない。そういうルールの様だ。
だが本人の資質が影響するだろうから、資質を後天的な要因、関係する仕事に就かせて操作できないかと考えたのである。
これが上手くいけば『荷運び』ジョブ持ちを量産する用意があるらしい。
この情報を隠し通すのは難しいだろうし、最終的には一般にも広めるという話が決まっている。
この世界で流通革命が起きるな。
なお『荷運び』ジョブと≪アイテムボックス≫スキルが重視されるのは、行軍を始めとした各種軍事行動において、物資の運搬が最重要項目の一つだからだ。運搬能力の向上は戦況を一変させるというのが戦術家にとっての一般常識である。
軍事以外にも有用性が高いし、6000人中1000人ぐらいが『荷運び』ジョブになっても問題ないという話だ。
また、「俺が組まないとセカンドジョブが解放できないのか?」という疑問にも調査のメスを入れるという。
俺は領主側の準備が整い次第、順次ジョブ確認をするつもりでいればいいようだが。
これが上手くいくなら、俺の報酬は減るけど、戦力を整えるお仕事はずいぶん早く終わるな。
「来月の頭から始める予定でいるから、それまではゴラオン達と一緒にダンジョンに潜っているといい」
アゾールさんはそうやって今後の予定を確認して話を終わらせた。
そのはずだったのだが。
「すまん、伝達漏れが一件あった。
お前らのギルドハウス、明日に引き渡ししたいって連絡があったぞ」




