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北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
ギルド『北極星』
40/320

ちょっとした冒険(後)

 俺とゴラオン、そしてスピカ嬢。

 この3人のうち、最も防御力が無いのはゴラオンだ。


 この場合の防御力は防御スキルの充実度で、俺やスピカ嬢の場合は『騎士』の為に防御力ボーナスを乗せられるスキルを所有している。

 しかしゴラオンは『戦士』で『獣使い』のため、ステータス的には俺達と互角でも、防御に関しては地力が違う。

 防御よりも攻撃のアタッカーであったことも災いし、ダメージの蓄積は3人の中で最も大きかった。


「く、そがっ……」


 俺はすぐに≪召喚術≫でマリーを呼び、MP切れのミューズ嬢が倒れたゴラオンを後方に下げた。

 数の上では先ほどまでと同じ、しばらくは持つ。


 だが召喚されたばかりのマリーでは崩れた戦線の復旧がすぐに出来るはずもなく、ゴブリンが2体ほど後方に抜けた。

 『戦士』ジョブ持ちのミューズ嬢が杖を振り回して追い払おうとするが、慣れない物理攻撃には思ったほど力が乗らない。俺達は戦線の維持で精一杯なので、助けに行くこともできない。


 桜花が大治癒薬でゴラオンのダメージを回復させるが、彼がすぐに戦線復帰できる訳では無い。ゲームと違い、一回倒れるほどにダメージが蓄積するとHPが回復してもすぐには動けないのだ。





「ここまでだな。≪アローレイン≫」


 マリーは召喚コストのMPが支払えなくなったら送還されてしまう。そうなれば終わりだ。

 俺が軽い絶望に襲われていると、ようやくガナードさんが動いた。


 ガナードさんは弓に矢を番えると、覚えてからもあまり使っていないスキルを使う。

 『弓兵』のアクティブ、≪アローレイン≫だ。


 ≪アローレイン≫は名前の通り、矢を雨の如く射かける技だ。弓兵のスキルの中でも、唯一ではないが数少ない範囲攻撃である。

 レベルの高い人が使っているため、ゴブリンがあっという間に倒されていく。……曲射でどうやってダメージを叩き出しているのか気になったが、そこは突っ込んではいけないのだろう。


「せっかく回復させたのに出番がないね」

「ああ、大治癒薬が無駄撃ちになったな」


 多少のレベル差があろうと、そこそこのレベルの奴らを集め数で押せばなんとかなるけど。ガナードさんとゴブリンではその「多少のレベル差」が大きすぎた。

 基礎能力(レベル)の差、遠距離攻撃、狭い通路、そして折り重なった死体で悪くなった足場。それらの要素があり、ゴブリンにとってガナードさんは「倒せない敵」と認識される。俺達と違って。



 ガナードさんが攻撃に加わって数分。いや、数十秒か?

 たったそれだけでゴブリンが逃げ出した。勝てないと悟ったのだろう、俺達に背を見せ無様に潰走する。


「はぁ。何本の矢が回収できるかね?」


 それだけのことをやった男は、少なくなった手持ちの矢に嘆息していたのだが。

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