手合せ
先ずは実績作りをという訳で、ゴラオン少年らに引率のガナードさんを加えた4人をパーティに加え、実戦訓練をする事にした。
桜花やメイドトリオとやった時は2週間程度で経験値が入ったし、それが妥当と考えたのだ。
「召喚魔法込みとはいえ、本当にそっちは2人だけでいいのか?」
「いや、さすがにその3人には負けませんよ」
「だ、そうだぞ、新人ども」
まずはお互いの能力を把握すべきという事で、俺&桜花 対 ゴラオン&スピカ&ミューズの組み合わせで軽く一戦することにした。
正直、負ける要素はないと思っている。
ただ、そんな俺たちの態度が気に入らないのか、新人トリオはやる気十分であった。
見た目は小学生だからな、俺達。11歳のミューズ嬢はともかく、残り2人は中学生相当だけに、年下に舐められてお怒りの様だ。
「では、始め!」
ガナードさんの合図で戦闘開始。
先ずは俺達がイニシアチブを取った。
「≪召喚≫マリー!」
今回はティナではなく、マリーの出番だ。
ティナに比べるとマリーはまだ経験不足なので、ゴラオン少年と戦うのはちょうどいい訓練になると思ったからだ。
でも舐めプではない。レベルだけ見ればマリーの方が2レベルほど格上なので、普通に戦わせればまず間違いなくマリーが勝つ。
機先を制され、主力のゴラオン少年がドラゴンパピーの相手をする事になった新人トリオ。
ゴラオン少年は必死に剣を振るうが、それを無視して突っ込んでいったマリーに圧し掛かられ、仰向けに倒されてしまう。そのまま剣を持つ手を踏まれて審判から「戦力外通知」を喰らって戦線離脱することになってしまった。
俺は槍を手に騎士のスピカ嬢を抑える。相手の行動を制限するように距離を詰め、有効打にならない攻撃を加える。
俺は抑えるだけでいい、その間に――
「≪ファイアジャベリン≫」
桜花がミューズ嬢に一撃いれて終わりだ。
神官のHPでは桜花の魔法を耐えきる事など出来ないので、出番なし、見せ場無しでミューズ嬢も脱落。
「ミューズ!? ちょっと、大丈夫!?」
「治癒薬、治癒薬はどこだ!?」
って、あ。
ミューズ嬢、神官服が正面から焼け焦げて、わりと酷めの火傷を負っている。やりすぎた?
ミューズ嬢は失神KOなので、審判に言われるまでもなく戦線離脱。この時点でスピカ嬢も戦闘放棄したので試合は俺たちの勝ちなんだけど。
手加減しても、死ななきゃいいか程度にダメージを抑えさせていたけど、それでも危うく即死級の一撃になる手前の威力だったようで。
俺と桜花は、こってりと怒られたのであった。
いや、実戦を想定した訓練だよ?
ギリギリを攻めたっていいじゃないか。
言ったらお説教の時間が長くなりそうだったので、それは言わずに胸の奥にしまい込む。
考えが足りなかったのは相手の年齢が11歳って所だろうな。
ステータスを見た限りではレジストしてダメージ半減、そうなるって思ってたんだけど、戦場に出て空気に呑まれて、実力を発揮しきれず素通ししたんだろう。
普通に考えたら、これぐらいの子供がまともに戦場に出られるっていうのもおかしな話、なのかな?
俺、モンスターのいる異世界だし、子供でもそれぐらいは出来ると思っていたよ。