業務提携
「つまり、治安維持に携わる奴らが一般人より弱いなんてあっちゃいけないのさ。
日本人冒険者共がいつまでも大人しくしている保証はないし、こっちの戦力がバレるまで時間はあるだろうが、最低限の準備は進めてぇ。衛兵隊はすぐにでも、領主様のトコの精鋭兵士にも最低限の訓練が必要になる。
で、レッドは今後の為に経験値稼ぎがしたい、老後の資金を稼ぎたい、だったよな?
だったら、色々と優遇もするからちょうどいい話だろ。かなりの報酬が見込める大仕事だ、やる事がギルド運営じゃなくて教導隊って違いはあるが、そんなの細かい違いじゃねぇか」
アゾールさんはどこか軽い調子で言うが、目が笑ってないから台無しだと思う。
冒険者と兵士の教官では仕事が全然違うと言いたいけど、必要とされている事は分かるし、俺の損はかなり小さい。
あとは期待に応えられるかって話なんだけど。
「まずは新兵がどんな成長をするかで様子見だ。ギルド『北極星』に改めて仕事の依頼だな。
新兵3人のセカンドジョブと生産ジョブを解放してくれ。報酬は……そうだな、1人につき500G出そう。
期間の方はどうする? どれくらいかかりそうだ?」
「それなら、1ヶ月もあればできると思います」
「そうか。なら1ヶ月を最初の基準に設定して、その後の事はその後に考えるぞ。
なにぶん、初めての事だけにやってみない事には分からない事だらけだからな」
衛兵は500人ぐらいいるぞと言われたが、頭に入ってこない。話が超展開と言っていいほどのペースで進むため、俺の理解が追い付かない。
それなのに反射的に分かる事だけだが返事をしてしまったため、俺の状況は思いっきり流されてる。俺の覚悟とか決断とか、一切関係ない所で。
細かい話は後で詰めるとして、今、分かっている事をまとめてみる。
まず、プレイヤーと現地人は敵対っぽい状態にある。デフコンのレベル2、要警戒って事かな。
次に、現地人のジョブは一つしか確認されていない。それが一般常識だ。
このままでは拙いからと、現地人のレベル底上げを依頼された。ボランティアではなく、仕事として。
俺と桜花は固定メンバーとして他の人をパーティに加えるが、メンバーは約1月程度でローテーションが行われる。
衛兵さんは街に500人ぐらいは居るらしい。たぶん精鋭兵士団はもっといると思われる。このグランフィストの人口規模は20万人ぐらいらしいので、常備兵は5000人はいても不思議じゃない? ……それを、全員、面倒見るのか? 月に4人だと何年かかる?
なんとなくだが、この世界に俺達を送り込んだ奴がシステム的なロックをかけていたような気もする。
俺たちのリアクションを予測し、最低限の協力体制を整えるための布石にしたとか。
あれ? いや、その場合だと、俺達を召喚(?)する事を前提にこの世界を作ったことになるのか。さすがにそれは無いか。
この世界の歴史なんて調べた事はないけど、古代人の文明らしき遺跡とかあるし、その時は3ジョブが普通だったかもな。
ま、考えてもしょうがない。
定期収入のアテができたとだけ理解しておけばいいか。




