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北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
ギルド『北極星』
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ギルド開設⑤ 方針転換

 驚いたことに、この世界の住人はセカンドジョブや生産ジョブへの経験値分配について何も知らなかったようである。

 中には生産ジョブへ極振りしている人もいるようだ。

 どのジョブに割り振っているかは横に置くとして、彼らがジョブ一つでやっているというのは、俺には大きな驚きだった。


 この世界に来て約3ヶ月。

 こんな事が今更発覚したことにびっくりだよ。



 通常、キャラを作るときには3つあるジョブすべてに経験値を1点割り振って、3つのジョブを解放する。そうすることで有用なスキルを多数扱えるようになるのだ。ジョブ一つ分では、総合レベルが互角でも、スキル的には大きく不利になる。

 総合レベルを低く抑えステータス上げを重視しているとみればそこまで問題のある行動でもない。

 1つのジョブに全部経験値を割り振ったとして、レベル10になるのに必要な経験値は55である。3つを平均的に成長させようと思えば22点で済むのに、だ。総合レベルで経験値獲得の可否が決まるシステムなら、その方がいいと思うプレイヤーは出てくるだろう。

 能力値と冒険スキルの合計を見れば1ジョブ割振りの方が強いように見える。同じ55の経験値を稼いでいる相手であれば3つのジョブへ平均的に割り振っている方が強いとしてもだ。ちなみに平均的に割り振ればジョブレベルは6-5-5で総合16レベルとなる。


 ただし経験値への制限(キャップ)は最大レベルも関わってくるので、実際はそんなに上手くいかない。



「つまりだ。

 坊主は、俺たちがまだ、もっと強くなれるって言うのか?」

「そうですね。出来そうだと思いますよ? 本人の認識次第って事もあり得るんですけど」


 確認のために、ゴラオン少年に実験台になってもらった。

 まぁ、パーティを組んだだけなんだけど。


 ゴラオン少年は『戦士』2レベルの他に『獣使い』のセカンドジョブを持っていた。0レベルで未開放だけど。生産ジョブの方は『農家』である。

 経験値は持っていないけど、総合も2Lvだからすぐに成長させられると思う。

 ……なお、INTがプレイヤーではありえない「9」だったことは口にしていない。仲間の能力値を見れるってのは言いふらしたくないかな。この世界のパーティがどんなシステムか知らないけどさ。


「あー。うちのじーちゃんが『獣使い』だったから、その関係かも」


 ゴラオン少年は心当たりがあったのか、そんなことを言っていた。

 ただし『農家』の方は全く心当たりがなさそうだが。彼の家系は代々衛兵をやっているらしいので。



 アゾールさんは、最初は俺たちのやり取りを静かに見ていたが、話がひと段落つくと、重々しい雰囲気で口を開いた。


「悪いが、この話はここだけの物にする。上に報告はするが他言無用、絶対に漏らすな」

「え? まぁいいですけど」


 その雰囲気、プレッシャーにのまれて俺は何も考えずに従う事を決めた。特にデメリットも無いし。

 何か考えがあるのだろうから、大人しく従うのが正解だと思ったのだが。


「それと、『北極星』のギルドメンバー集めはいったん中止だ。今、集まっている連中がいれば話は別だが、新規募集は中断してもらう」

「ええっ!?」


 さすがに簡単には肯けないことを言われ、俺は叫び声を上げた。





 驚く俺に、アゾールさんは淡々と事情を説明する。


「今、日本人冒険者と俺たちは潜在的な敵対関係にある。

 レッドの話が本当なら、奴らは俺たちよりも早く戦力を整えて反旗を翻す可能性が高い。

 レッド、お前の予想でいいが、ジョブ一つが9レベルの奴と戦うとして、お前はどれだけの総合レベルなら一対一で勝てると思う? そのレベルに必要な経験値は?」

「えーっと、ちょっと待ってください」


 9レベルなら、最低45点の経験値を持ってるわけだけど、スキルの補正を考えると……。


「総計12レベルなら互角、だと思います。必要経験値は3分の2で、効率って言うか、難易度的には半分未満、です」


 生産ジョブだって立派な戦力にカウントできるし、そっちも育てた方が何かと都合がいいんだよね。主に装備面で。

 ゲームの製作スタッフはある程度まんべんなくレベル上げした方が「効率的に強くなれる」ようにゲームバランスを整えていたから、単独ジョブレベル上げはネタにしかならないのが『七鍵世界TRPG』である。


 その辺を説明しきるのは難しかったけど、部屋の中に満ちた異様な雰囲気につっかえつっかえになりながらも、何とか説明しきった。



「こうなると金の工面とかメンバー集めとか、そんなチャチな話じゃねぇ。

 悪いが、レッドには強制的にでも協力してもらう事になるぞ」


 俺を睨むように見るアゾールさんに怯えつつ、俺は「どうしてこうなった」と頭を抱える事になった。

ステータス

名前:ゴラオン

ジョブ:戦士(2)/獣使い(0)/農家(0)

能力値:

STR 12

VIT 11

DEX 11

AGI 11

INT  9

MND 10

MP  10

HP  16

スキル:≪戦技(2)≫≪物理ダメージ上昇(2)≫

冒険スキル:≪強力(1)≫≪採取(1)≫≪根性(3)≫

アクティブ:≪強打)≫≪薙ぎ払い≫

装備:ロングソード、バックラー、革の胸当て

所持品:治癒薬×1、水袋

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