ギルド開設④ 出向者
アゾールさんにギルドハウスは新メンバーが集まったらと、そう言ったら、とても若い、今の俺より少し上の年代の子供を3人紹介された。あとおっさんが1人。
「2年ぐらいは訓練兵扱いだが、それが終わったら衛兵隊に入る予定の連中だ」
「ゴラオンだ。『戦士』だ、です!」
「スピカ、です。『騎士』です」
「……ミューズ。『神官』」
「それで俺が引率役の『探索者』、ガナードだ」
ゴラオン少年は俺よりも頭一つどころか二つ分ぐらい大きい、筋肉質な男だ。それでも13歳らしく、西洋系の連中は発育がいいと内心で嫉妬してしまう。黒髪黒目だけど。
スピカ嬢は俺より頭一つぐらい大きい14歳の、金髪碧眼の女の子だ。身体の線の細く、これで騎士が務まるのかと思ったが、この場ではノーコメント。だって自分も含めて見習いだし。
ミューズ嬢は俺と同じぐらいの身長の女の子。11歳。ややぽっちゃりした感じで、胸部装甲がとても厚い。スピカ嬢が薄いだけに……なんか殺気を感じたので胸の話は横に置くとして、真っ赤な前髪が長く俯きがちで顔はよく見えないのと、ぼそぼそとした喋りでとっつきにくい印象を受けた。
んで、引率役と言っていたガナードさんは身長180㎝ぐらいでゴラオン少年よりもちょっと大きい。身体は細そうに見えるけど、身長の分で補正が入って細く見えるだけ。付いた筋肉が引き締まっているのも細身に見える理由かな。
見た目と言うか雰囲気が、かなり強そうな感じだ。アゾールさんよりも強いように見える。
「衛兵隊から、3人の見習いと引率1人をギルド『北極星』に出向させる。
期間は1年を予定し、状況次第で切り上げや延長を考える。出向中は冒険者に準ずるものとして扱うが、給料はこちらで出すのでこいつらの稼いだ分はギルドの財布に入れてもらえればいい。
その代わり、出向者受け入れの報酬は出さないがな」
アゾールさんは俺の「新メンバー」という言葉に対し、出向者を派遣する事で対応してみせた。
違う、違うんだよ。
これでどうだと言わんばかりのアゾールさんに対し、俺は頭を抱える。
「アゾールさん。俺は冒険者として、この先何年もやっていく仲間が欲しいんですよ。1年2年の短期出向者が欲しいわけではないんです。
彼らが衛兵になるのを諦めて冒険者に転身するならともかく、所属が衛兵隊の預かりのままじゃ、意味ないですよ」
「そんな!?」
俺の言葉に、アゾールさんが悲鳴を上げる。
いや、普通に人が来れば問題ないんですけどね。レベルアップして、地下迷宮の先で安定して稼げるなら問題ないんですけどね。
ただ、俺と桜花の2人だけでそれは難しいから、仲間を探しているんですって。
俺はみんなの前で懇々と状況を訴え、目的と、手段と、達成条件を説明する。
今度は目論見を外したアゾールさんが頭を抱えている。
新人3人は興味がなさそうにしていて、冒険者になってくれそうもない事がなんとなくわかる。いずれ辞める腰かけに、こだわる気はなさそうだ。
ガナードさんは面白そうにしているけどね。
「まぁ、いい。この4人を出向させるのは書類を通した正式な話だし、レッドが受け入れてくれるなら、このまま話を進める」
「それは構いませんよ。この仕事はありがたく受けさせていただきます」
やがて諦めたように、アゾールさんは出向の話だけでもまとめる事にしたようだ。
俺たちギルド側は単純に収入が増えるだけなのでとても助かる。
そうやって話がひと段落したところで俺は自己紹介の時に気になっていたことを聞くことにした。
「そうえばなんですけど。先ほど皆さんのジョブを教えてもらいましたけど、セカンドジョブを聞いてもいいですか? あと生産ジョブも」
戦力の把握は大事だと思うんだよ。特にセカンドジョブを聞いておかないことには、戦場で効率よく連携できないし。
しかし、俺のそんな考えを彼らは疑問で返した。
「セカンドジョブ? ジョブは普通、1人1つだろう?」
どうやら、俺の冒険は険しい道になりそうである。




