ギルド開設③ ギルドハウス
本日2話更新です。
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「でかすぎる!?」
「中古物件だからな!」
ギルド名が決まったので、次は本拠地、ギルドハウスを購入することにした。
そして予算10000Gで買えるいい中古物件があると言うので見に来たのだが……目の前にあったのは予想以上にでかい建物と広い敷地だった。
「収容人数最大200人、50人は寝泊まりできる宿舎に100人は一度に入れる食堂、工房は無いが錬金室ならあるし、訓練場もあって小さいけど畑もある! 馬車だって使えるように馬小屋だって完備!
本当なら10万Gのところをいわくつきの物件って事でちょうど10000Gと、とってもお得! 完璧だろう?」
「いや、広すぎて逆に困りますよ!? 広すぎて清掃員を雇わないと駄目でしょ! 人件費がかかる!」
「ただし1年は絶対に住むのが条件だ! 逃げたら借金50000Gだぞ!」
「お願いだから話を聞いてよ!!」
アゾールさんの部下に案内されたのは、ギルド全体が犯罪行為に加担していたという理由で、ギルドメンバー全員が処刑されたといういわくつきの物件。
悪評が立って購入希望者がおらず、塩漬けになってしまった不動産屋泣かせの建物、らしい。
持っているだけで税金や施設管理費がかかるし、ここ最近はこの規模の建物を購入しそうなギルドも無いので、ちょうどいいから俺に押し付けたいという思惑で紹介されたのだ。
値段設定した人を小一時間ほど問い詰めたいが、売値が安いのは間違っていない。
ただし税金や管理費用を無視すれば、であったが。
ぶっちゃけ、買えない事は無いけど、維持できないのだ。
「この規模の建物だと、税金もお高いんでしょう?」
「あー。年間で20000G、だな。施設維持は清掃員を雇うとして、2人で年6000Gは出すことに、なる」
「清掃員の雇用費用だけじゃ駄目でしょう? 壊れた時の補修費用なんかも含めれば、維持するのに年間30000Gは最低ラインじゃないですか」
「うん、まぁ、そうなんだが」
この衛兵さんの話では、不動産業者からアゾールさんに売却先を探してほしいと泣き付かれているようで、俺のギルド設立は渡りに船のような幸運だったようである。
維持費3000Gなら3年間も売れなければ問題になるわけで、こういったギルドハウスがいくつも余っているらしい現状では、問題の大きなところからすぐに現金にしたいのが業者の考えである。このあたりは日本の不動産売買と同じような話である。
「しかしだな、ダンジョンまでの距離を考えると、今までの宿と比べて半分で済むんだぞ。これはすごく得じゃないか?」
「それはそうなんですけど……」
これは日本で聞いた例え話だが、稼ぎのいい人にとっていい不動産と言うのは、勤務地に近い不動産なのだ。通勤時間を1日1時間短縮すれば、その人の時給が1万円なら1万円の日収増と同じであり、月に約20万円稼げる不動産だと評価できる。
あとは周辺施設なども考慮しないといけないのだが、通勤時間の短縮はかなり大きな要素だと言っていた。
俺と桜花だけでなく、ギルドメンバーが増えれば彼らの移動時間短縮も可能になり、その分の増益換算額はどれぐらいになるか。
1人の稼ぎが純利益で1日30Gであれば、俺と桜花で60Gは確定、時給換算で10Gであり、月に200Gぐらいの収入増と同じに考えられる。それだけで年間の収入増は2400Gだ。
冒険者が25人いれば採算が取れると考えられるし、今後の収益増を考えればもっと少ない人数でもなんとかなりそうだ。
いや、人数が増えれば事務員なども増やすだろうし、単純計算だけで考えたら不味いか。
って、「1年は絶対に住むのが」?
「1年住んだら、引っ越していいんですか?」
「ああ、その時は不動産屋が買い取ってくれるだろうな。その時の値段は知らんが、ギルドの評判次第じゃないか?」
だったら問題ないかな?
購入費+維持費で40000Gもするけど、20000G以上で売れれば損にはならない、と思う。
1年後のギルドの規模を見て、新しくギルドハウスを探してみればいい。
ギルドメンバーが集まらなかったら最悪だけどな!
その時は大赤字だ。ギルドハウスの悪評次第ではそれも有り得るかもしれない。
少し考え、即決はしないことにした。
アゾールさんに「ギルドメンバーが集まりそうだったら買います」と言って、その結果に任せよう。メンバーにはここのギルドハウスを買う予定だと伝えていいという事で。
そう言えば新メンバーも集めてもらえるんじゃないかな。




