表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
北極星の竜召喚士
300/320

神様との雑談

 結局、俺の欲しかったスキルや能力の大半は得られなかった。

 得られた能力はパッと見ではしょぼいけど、使ってみればきっとかなり有効だと思えるモノが一つ。


 能力を得たのだからさっさと帰りたかったのだが、何故か俺の意識はこの白い空間の中にある。



「どうやって戻るんだ、これ?」

「最後に、一つ確認したいことがあるんだよ」

「確認?」

「日本に、帰りたくなかったのかな?」


 なんで神様がそんなどうでもいい事を聞きたがるんだ?

 と言うかね、神様なんだから俺の心ぐらい読めるだろうに。この世界は神様の作った仮想空間のそれじゃないのか?


「心の中を深く読むのはね、面倒なんだよ。1人1人仕様と言語の違うプログラムからお目当てのデータを探すようなものでね、暗号解析から検索エンジンの作成までを個人ごとにやらないといけないって言えばわかるかな?

 こうやって質問すれば思考の表層を掬うだけでいいからね。不可能ではない事と手間がかかることは別問題という訳だよ」


 俺は喋っていた心算だったが、相手は常に思考を読んでいたのか。

 体が無いんだから、そりゃぁ喋ってはいないよな。納得。


「うん。だからどうでもいい事って君が思っている理由を聞かせてもらいたいんだ。頼むよ」


 別にいいけどね。


 心からそう思った俺はざっと「日本に戻る理由が無い根拠」を説明する。

 きっと本人ではない事、こちらに未練がある事。戻ったら問題が起きるだろう事。前の攻略者から聞いた話その他を含め、出来るだけ細かく。


「気が付いちゃったか。

 でも、日本に問題無く帰る事は出来るって言っても、それでも戻らないのかな?」


 例えばこっちに残る俺がいて、日本に行く俺がいて。そしたら互いに殺したくなるほど相手を羨むかもね。別の世界にいる以上は別人だ。

 こっちの自分を消去して日本に行った場合はこっちに残した連中が気になるし。こっちの俺が死ぬってのと何も変わらない。

 俺にできる事は、今いる世界で生きるだけだ。


 人間が何を以って自分と言うのかは、知らん。

 ただ、俺はここに居て、ここで生きている。

 大事な事なんてそれぐらいだろう?


「自由に行き来できる力は? 欲しくないかい?」


 それが手に入るなら相川とか、狂ってないだろ。

 つまり最初から手に入らないと分かっている案件だ。考えるだけ無駄だろう?


「うん? 別にそれぐらいは構わないよ? ただ、本人限定で向こうの一部の物をこっちに持ち込めなくはするけど」


 出来るんかい!?


「それぐらいなら構わないよ。外見調整もセットで付けるけど、報酬の変更はするかい?」


 いや、いい。それで死亡リスクを回避できるか分からない部分もあるし。厄介事の臭いもする。今の俺が俺のまま日本に行くのは自殺行為って気がするよ。

 それよりも気になったのは、相川らが何で狂ったのかだ。

 ここまで至れり尽くせりで、なんであいつは狂ったんだ? 日本に帰ってそれで終了だろう? 狂う理由が無い。


「いや、自分も愛した人たちも作りものだと言われて、記憶が全部作られたものだと知って、それで狂わない君の方がおかしいんだけどね?

 事実、ヤマト村だっけ? そこから来た冒険者の心は全滅しちゃったしね」


 誰かの被創造物だったのがそんなに嫌だったのか? どうでもいい事なのに。

 それを言いだしたらホムンクルスとか、どうだよ? メイドサーヴァントとか、どうだよ? 俺たちの被創造物じゃないか。あの子らはそれでも生きてるじゃないか。


 誰かに作られた存在だからってのは、自分を貶める理由じゃないぞ。それで自分の価値が下がるなら食べる飯は野草や野生動物にでも限定しておけ。農業の産物や家畜を食うな。人間だけを特別扱いするんじゃねぇと言ってやろう。

 大事なのは、必死に生きているかどうかだろう?


 某ラノベでもコピー人格がコピーであることに耐えられずに人格崩壊するとかいうネタ話があったけど、そんなどうでもいい事(・・・・・・・)で人格崩壊するとか、俺には理解も共感もできないんだけど。彼等は共感しちゃう同類なのかね?


 そもそもだ。

 それで狂うぐらいなら自殺して人生を終わらせろよっていうんだ。

 他人に迷惑かけていい理由にはならんぞ。自分の不幸は他の人が優しくする理由にならず、不幸を振りまく正当性にもならん。不幸だからと人に要求するな、不幸だからと他人を道連れにするなよ。

 意図して悪事を行ったのなら、更に不幸のどん底まで突き落としてやるわ。


「いやいや。心は折れたけど、その場のノリでこっちに残留しちゃったけど、彼等はテロリストじゃないよ? あの相川だけだって」


 なんだ。詰ま――良かったな。


「君。安全第一とか言いつつ、たまに暴走するよね」


 その矛盾も人間だと言いたい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ