パーティメンバー募集中
「おはようございます」
「おう、おはよう!」
衛兵さんの宿舎の居心地は悪くない。
そこそこの飯が3食用意されるし、ベッドはやや硬いけど隙間風に悩まされないし、なにより衛兵さんらが俺に対し好意的なのでこちらも笑顔で応対できるというものだ。
「今日の飯はなんだ?」
「ベーコンエッグとトーストです。ベーコンはカリカリと柔らかの2種類を用意しましたが、先着順なので食べたい方が無くなっていたら、ごめんなさい」
「うぉぉ!? マジか!!」
ここにいるのは領主側の意向もあって、基本的に無料である。
しかしそれだと居心地が悪いので、俺と桜花は朝ごはんの配膳手伝いや掃除をするなど、少しは役に立てるように気を付けている。
タダ飯食いの立場はあまり嬉しくないのだ。
ニート、良くない。せめて家事手伝い。
元社会人は、無職になりたくいないのであった。
宿舎生活を始めて2週間が経った。
桜花と俺は、ダンジョンを1日6時間に制限している。
これはメンバーが2人しかいないのが一番の理由で、1日に2戦が限度という理由からだ。
それに、持てる荷物が少ないため、奥まで行っても実入りにつながらない可能性が高いというのもある。
『荷物運び』のジョブを持っている仲間が欲しいです、切実に。
減収は将来設計に大きくヒビを入れ、早く家を買って40ぐらいで冒険者引退をするのは難しくなった。
家を買うところまでは何とかなってもその後の収入がカツカツになると予想され、冒険者を引退できず、いずれ無理をして命を落とすだろうと予想された。
「だから、仲間を探したい。どこかのギルドに入って、仲間を見つけて、もう少し奥で稼げるようにならないと、いつまで経っても赤貧冒険者なんだ」
「ですがマスター、入るギルドにアテはあるのですか?
プレイヤーギルドは入れないでしょうし、入りたくありませんし、地元のギルドは、その……」
「家族でやってるような身内限定の所ばかりだからな……」
そのために仲間を探したかったのだが、残念ながらアテが無い。
どこかの冒険者ギルドに入り、仲間を探そうと思っていたのだが、残念ながらそれも難しいのが現状だった。
と言うのも、地元の冒険者ギルドはそのほとんどが老舗の、メンバーが固定された団体だったからだ。新人募集はしておらず、世襲に近いやり方で人員をやりくりしていた。
ギルドに入るにしてもパーティ単位でしか受け付けておらず、俺たちが入れる隙間が無い。実力のある即戦力級の冒険者なら入れてもらえるのだが、俺たちはまだ新人でしかない。日々の生活で手一杯の役立たずを入れる余裕というか、理由が無い。
ギルドの規模を拡張しようとする野心があれば新人でも育てて戦力にしようと言うのだろうが、どこかの誰かが冒険者の市場を荒らしまくったおかげで今は現状維持で精一杯らしいよ?
もちろん日本人のギルドには入れないし、入りたくも無いので却下である。
ギルド一つが潰され処刑された件もあり、日本人の中で俺の評判は最悪らしいからな。
そうそう、日本人の冒険者が、最近は自分たちの事を「プレイヤー」なんて言い出したらしいよ。
地元の住人はNPCだってさ。
異世界をゲーム感覚で生きているのかね、あいつら。




