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北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
北極星の竜召喚士
298/320

ダンジョンクリア(?)

 相川に勝っても全然嬉しくない。

 無駄な戦いの果ての、どうでもいい勝利だった。

 せめて、とばかりに相川の死体は剥ぎ取れそうな物だけ回収して灰にしておいた。


 ダンジョンは多層構造で同じダンジョンに複数のパーティが入ってしまう事はかなり稀なのだが、今回はその稀な事が起こってしまったようだ。二軍パーティと組めればラッキーだったのだが、それが相川(敵対者)であればアンラッキーでしかない。

 あっちにしてみれば運のいい出会いだろうが……こっちも相川に仲間がいていき帰っていたという情報を入手できたのは実入りとして大きいからと、そう思っておこう。あとは領主や衛兵に丸投げだ。





 戦いが終わると、なんだったんだろうかという気になってしまう。

 ボス戦は有効な戦術を見付けられたと思うんだけど、そこで押し切れずに物資を無駄に使っただけ。

 ここまで来る最中に収入はあったから黒字ではあるけど、収入は微々たるもの。生産の貧弱さから次回の物資を揃えるのも一苦労だろう。油、結構稀少なんだよ。


 俺たちはそんな徒労感に包まれ、ついでに脱力感にもさいなまれていた。


 相川らがどうやって5層を攻略したのかが分かった気がするんだよ。

 奴らは隠密性能の高い連中を主力に据え、道中の戦闘を全てすっ飛ばし、ボスの首一つを獲ったのだろう。

 つまり、「まともに戦わない」が正解だったのだ。

 そうでなければ奴がここまで単独で来れた理由が分からなくなる。


 俺たちは上がった敵のレベルと必要になったと感じたレベルの高さ、何よりも開放されたパーティ上限から大人数での戦いを選んだのだが、それら全てがフェイクだったのである。

 いや、それも違うか。

 ジョブごとに、戦い方はいくらでもある。

 どんな敵でもちゃんと考えて行動すれば活路は開ける。

 TRPGとは時にGMのシナリオを超えてクリアする方法を自分たちで創れるゲームだったよな。

 俺たちも勝ち筋を作ったという意味では間違っていない。



「よし、反省はここまでだ」

「ふえっ!?」


 俺は気合を入れ直し、立ち上がる。

 落ち込んでいたはずの俺がいきなり立ち上がった事で桜花が驚いた声を上げたが、それも気にしない。


 周りにいるみんなはまだ落ち込んでいる者やそれを励ます者、今後を話し合う者などに別れていたが、おれはその話し合いをするグループに参加することにした。



「これぐらいの出費だったから――」

「装備の剥ぎ取りで――」

「次回はこれぐらいの――」


 活発に動いているグループは、今回の収支計算と次回の攻略について話し合っていた。

 バランをはじめとする彼等はすでに前を見ていた。

 そんな彼らの一人が俺を見つけた。


「お、意外と速かったな。立ち直るの」

「いつまでも座ったままじゃいられませんから」

「いいねぇ。ま、一回や二回の失敗でウダウダ言ってられないからな。ダンジョン攻略なんて思った通りに進まないもんさ」


 その人は相川の首を刎ねた剣士で、バランパーティの古参冒険である。

 すでにいい歳なのだが、それでも活力に満ち溢れているという表現をしたくなる、そんなおっさん剣士だ。レベルに寄らない実力もかなり高い。

 俺は息子のごとく扱われている。本物の息子とは仲が悪いらしいよ。





 しばらく祭壇前で話を続けていたが、全員が立ち直ったところでもう帰ろうかと神殿から出て行こうとした。しかしそこで俺たちの意識は途切れてしまった。


 そして俺は数年ぶりに神様の声を聴くことになる。


「ダンジョンクリア、おめでとう。さぁ、報酬選択の時間だよ」

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