乱入者
こちらの先制攻撃により、敵は多大な被害を受けた。
先手必勝、相手に準備時間を与えない電撃作戦は上手くいったようである。
この手の戦闘はやはり先手を取った方が有利で、後の先なんてことは冗談でも有り得ない。後攻が有利である理由など存在せず、後攻の側が勝ったのであれば単純に実力差によるものしかない。
何と言っても、普通は先に数を削った方が有利なのだ。「捨石を使い相手の実力を見る」、それも実力差が無いとできないのだ。
大きく数を削られたホブリンの部隊は、それでも状況に対応して見せる。
元のHPが高かったからか、生き残ったホブリンは炎への対策として魔法を使える者を救出し、水を撒いたり土をかぶせ鎮火させるなどの手段をとっている。他にも自身のマントなどを犠牲に一次的な安全地帯を作る物もいる。
奇襲であったからこそ効果が高かったが、それが終わればそこそこの効果しか見込めないのであった。
肝心の毒であるが、実は、これに即効性が無い。
ミステリーなどで毒を飲んだらすぐに吐血・死亡といったシーンがあるけど、実際の毒にそんな即効性は無い。
体に毒が回るまでのタイムラグがあるのだ。効果を発揮するまで、少なくとも数分が必要になる。
それも効いていれば、の話であったが。
立ち直りつつあるホブリンたちだが、それでも組織的に動くにはもう少し時間がかかるようだ。
その間に俺達はボスの元へ人を集め、速攻でそちらを刈り取りに行く。
多少の炎であれば事前準備、≪レジストファイア≫の魔法などで耐えられるので、弓などの援護を受け6人の冒険者がボスの所に辿り着く。
ボスが多少強かろうと、パーティ一つ分の戦力を相手にできるほどとは思わない。「勝った」という思いが自分の中に芽生える。
もちろんそれをここで口にするなどフラグ建築でしかないので自重する。
だが、そんな俺の期待も自重に、何の意味も無かったようだ。
「やれやれ。シナリオブレイカーなのは現実だけにしてほしいのだけど」
「お前は!?」
突然現れた男がボスの首を刎ね、俺達に相対した。
男は俺たちに臆することなど無いとばかりに悠然としている。
そして、その男は俺たちにも見覚えのある顔だった。
「相川!」
少し前、冬に病を流行らせた事で捕まった相川だった。
殺されただろうとは思っていたが、仲間に復活させてもらったようだ。
くそ、衛兵の方でうまく処理できていないのかよ!
「ここに来たのは偶然だが、邪魔をできたとは運がいい。
だから」
相川はどこか壊れた笑みを見せる。
「死ねよ、お前ら」