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北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
北極星の竜召喚士
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未来のイメージ

 人間とは、基本的にどんな環境であっても適応できる生き物である。


 その適応力はダンジョンにも適用される。

 メンバー変更が最小限のまま同じ階層に挑んでいると、呼吸を合わせるのも楽になる。

 秋から春まで、ほぼ半年間かけて慣れ親しんだことでバランパーティとの探索はどんどん効率が良くなっていく。勿論元のパーティでも同じなのだが、バランパーティのようにハイレベルなメンバーとの探索はより高いレベルで連携が決まる。

 それを元のパーティに還元しているけど、追いつける気がしない。○ャンプに桜なんちゃら中学が舞台のサッカー漫画に似た様な話があったなーと、そんな事を思った。


 ボス戦は神殿奥に進んでからだろうという事で、神殿前で一休みする。

 何人かが神殿奥と周辺の警戒を忘れずにするけど、体力とMPの回復の為、残る全員がリラックスしている。

 戦地でも休憩できる神経の太さは冒険者にとって重要な才能である。



「装備の方は大丈夫か?」

「ええ。問題ないわ」


 桜花と互いにもたれかかるように休んでいると、バランがミレニアと持ち込んだアイテムの確認をしていた。

 ミレニアの『無限倉庫』は大容量であるが、取り出すのに時間がかかる。彼女は警戒をする面々と並んでこの場でゆっくりできないメンバーであり、他の連中にアイテムを配っている。


 煙幕弾、毒煙玉の類は弓兵部隊が中心になって使う事になっている。

 弓に括りつけてより奥に飛ばす事になっているのだ。バランが確認をしに行ったのもそのためである。


 バラン達は専用の矢筒を受け取り、中身を確認している。

 その間にミレニアは他に行き、回復アイテムの分配と数量調整をしていた。桜花のところにも『精霊の酒(MP回復アイテム)』を渡しに来ていた。

 俺のところにもHP回復アイテムの在庫数の確認をしに来ていたが、今回の探索ではあまりアイテムに頼らず済んでいたので、必要はないと告げている。



「もしかすると、これで初回攻略は終わるかもな」

「そうですね、マスター」


 元のパーティでもう一度攻略する約束をしているが、それでも俺にとっては大きな区切りになる。

 チート能力をゲットするためにも、出来れば今回で攻略を済ませたいところだ。

 今回の攻略が失敗すると、持ち込むアイテムの用意が難しくなってしまうのだ。特にMP回復アイテムは手に入りにくいので、使わせずに済ませられればそれに越した事は無い。


「攻略が終わったら、どうするかなー」


 一つの区切りがつくという事は、それ以上の攻略をする事が出来なくなるという事でもある。

 生活のためにダンジョンに潜る事になるのだろうが、それは未知に挑む冒険ではなく、仕事、作業でしかない。目標はノルマになり、色褪せてしまう。

 生きる目的というか、人生の、10年後の目標というか、そういった「遣り甲斐」を失ってしまう。


 「どうしようか」と俺はぼやくが、桜花は何も言ってくれない。

 その事に少しさびしいと思いつつも、よくよく考えればしょうがないのかと諦めが鎌首をもたげる。俺はどちらかと言えば個人主義者であり、自己中心的な考えが多い。他人に対する興味が薄いとも言う。

 そんな()に対して深く考えてくれるはずもないか。


 従者が主人の鑑であれば、桜花の態度は俺の今までの態度の表れなのだろう。

 それをさびしいと思うのであれば、これからはもう少し構うべきなのだ。



「それを、これからの目標にするか」

「どうしたのですか、マスター?」


 これが終わったら相棒の桜花や婚約者のイルともっと仲良くなろう。

 自分の中で小さな目標を立て、その為に頑張ろうと決める。


 思わず口に出してしまった言葉に桜花が反応したが、適当に笑ってごまかす。



 休憩が終わり、俺は気合を入れ直す。

 これを終わりとせずに進む道の途中として。


 俺たちは神殿の奥へと進んだ。

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