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北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
北極星の竜召喚士
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撤退

 ボス戦は、数による蹂躙劇となる。

 こちらの人数は俺や他のメンバーの召喚を含めて22人。

 それに対し、敵の数は推定200以上。


 戦場が狭いおかげで直接戦える距離にいる敵の数はそこまで多くないが、事前準備の差により、こちらが不利であることは否めない。


「≪フレア≫!!」


 レヴィアの背に乗り射線を通した桜花の魔法が炸裂する。

 定番のディスペル合戦は行われず、魔法はそのまま放たれたが。


「≪マジックシールド≫」


 敵の防御魔法にその威力を大きく削られる。

 これをこちらの仲間が打ち消そうとするが、その打消しを更に打ち消されてしまい、敵を行動不能に追い込むことが出来ない。


 ならばと必殺の≪グングニル≫を使いたいところだが、今召喚しているのはレヴィアである。ヤタではない。



「≪アローレイン≫!」


 最強戦力のバランも敵ボスを直接狙う事を諦め、雑魚退治で数を削る事を優先している。……最近ではずいぶん差を詰めてしまったが。

 初期こそボスを直接狙っていたが、近くにいる護衛が≪カバーリング≫でダメージを通させてくれないため、あまり意味が無かったのだ。いかにもひ弱そうな人間に見えるし、なによりこの雑魚どもを指揮しているのはこいつなのでさっさと始末してほしかったのだが。



 そんな中、俺が何をしているのかというと、桜花の護衛である。

 レヴィアの背に乗るというのは高い位置に行くという事であり、目立つという事だ。その上魔法まで使えば狙ってくれと言う様なもので、敵の弓兵が執拗に桜花を狙ってくる。

 俺はそんな矢からスキルも使わずに桜花を守っているのだ。


 スキルを使えば効果的に守る事が出来るのだろうが、MPを温存したい俺としてはスキルにまでMPを回す事が出来ない。

 (あら)はあるけど、いざって時は楯だけでなく体も使って壁になりつつ、自分の技術だけで桜花を守る。





 個々の戦力を見た場合、俺の見立てでは俺たち1人に付きホブリン4~5体といったところじゃないかと思っている。同時に戦える数その他を考慮すれば8対ぐらいまで(かさ)増してもいいけど。

 戦力比は22対200以上なので、このまま普通に戦っては全滅は必至といったところじゃないだろうか。


 流れというか主導権(アドバンテージ)は敵にある。


 それをひっくり返すにはボスへ戦力を集中させて一点突破、敵将撃破による戦場の混乱を狙うしかない。

 もしくは、敵の施設破壊というか、祭壇を壊して見せる事だろう。


 ただ、今はそれも難しい。



 ならば打つ手は一つしかない。


「撤収!!」


 前衛数人が煙幕を投げつけ、周囲を煙で満たす。

 ≪気配察知≫などのスキルはあるが、俺たち人間もホブリンも、基本は視覚情報に頼って戦う種族である。視界を奪われた状態での戦闘に切り替えるには時間がかかる。


 その他、油やマキビシといった足止めアイテムも使い、俺たちは当初の打ち合わせ通り後退を始める。

 被害が出てから退くのでは遅いのだ、余力があるうちに逃げてしまうのが正しい。


 敵も俺たちの行動を予測していたのかすぐに追撃を仕掛けるが、それでも事前準備の差は歴然だ。

 惜しげもなくアイテムをばらまき撤退する俺たちに近づくこともできず、逃亡を許してしまう。





 俺たちはそのまま5層から撤退し、次回のボス戦に備えて準備をする事となった。

 最初から様子見を目的としていたので、敵から逃げようと士気に影響はない。倒せそうなら倒してしまう事も考えていたが、今回は無理そうだった。それだけである。


 出費は大きかったが収入はゼロじゃないし、全体で見れば黒字である。それ以上にボスのいる場所が分かったのが何よりの収穫である。だから何も問題は無い。

 全ては次回の勝利につながっている。



 あと少しでダンジョンを攻略できる。

 その実感が俺たちを満たしていた。

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