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北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
北極星の竜召喚士
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5層のボス(後)

 3層のボスも人間の姿をしていたが、こいつはそれ以上に人間らしかった。

 一番驚いたのは、話しかけられた事である。

 疑似的な物なのか本物なのか。こいつには自我があり、蓄積される記憶があるという事。

 今まで全くその兆候が無かったため、考えてこなかった展開である。


 そもそも、ダンジョンモンスターとはなんなのかを考えてこなかった。

 ダンジョンにはモンスターが徘徊していて、それを殺すことでいろんなものを得てきた。そしてそれが当たり前だと思っていた。


 この世界の住人にしてみればそれは日常の一幕でしかなく、常識である。

 俺たち日本人はゲーム的なお約束としてそれをスルーしてきた。

 だから、モンスターを殺す事に罪悪感を感じないし、忌避感も抱かなかった。モンスターを殺しているという認識は薄く“人形”を相手しているようなものだったのだ。


 その前提が覆されるとなると、今後のモンスター討伐に影響が出るかもしれないな……。

 この情報は箝口令を敷くべきだろう。





「それにしても、慎重なものだな。前に来た者達はここまで加護(レベル)に頼っていなかったが。此度の挑戦者はよほど臆病とみえる」


 混乱する俺たちに、祭壇上のボスらしき人間が馬鹿にしたような物言いをする。

 この挑発に乗るほど短気な者はこの場に居ないので、誰もが何も言わず、武器を構えたままで動かない。

 のんびり会話をつづけたところで戦闘前の緊張感の中では体力を消耗するのだし、敵の戦力の分析はまた後でいい。見ていたって分かる事は少ないのだ、戦いの中で調べる方がいい。


「バラン!」

「レヴィアを!」

「了解!」

「いくぞ!!」

「「「応!!」」」


 だからここは相手のペースにのまれないためにもさっさと戦うべきだろう。

 俺はバランの名を叫び、誰を召喚するのかと問う。

 バランも名前を呼んだだけで俺の意図をくみ取り、即座にレヴィアを召喚しろと返した。


 そうなると他の連中も一斉に動き出し、戦闘開始とばかりに近接攻撃主体の面子がボスに駆け寄った。敵の戦力が整うのを見ているなどただの馬鹿だろうとばかりに勝負を決めにかかる。

 弓を使う者もバランに合わせ、強弓を射る。前に出た者を撃たないように、そして相手の回避行動を許さないように。ダメージはバランに任せて飽和攻撃を仕掛ける。

 魔法職はまだ直接攻撃の為の魔法を使わない。能力値ブースト系の魔法を使って仲間の支援をした。≪ディスペルマジック≫が使える者は相手の魔法を見逃さないようにと待機している。


 俺は言われたとおりにレヴィアを召喚。

 ただし≪神竜召喚≫ではなく通常の≪召喚≫である。逃げの為のMPをここで消費するわけにはいかないので、自分の護衛として使う。それが事前の打ち合わせで決まっていた動きである。



「会話を解さぬとは。野蛮人め」


 ボスはいきなり攻撃を仕掛けた俺たちに呆れた眼差しを向けると、横に腕を振った。


 そうすると、≪召喚≫とは違った形でモンスターが次々と現れる。そのほとんどが5層の序盤に出てくるホブリンだ。

 ホブリン傭兵団、呪術隊、偵察部隊……多様な部隊が祭壇の上から、祭壇の横から、次々と出てくる。


 ホブリン系を多数従えるという事は召喚士の鬼系特化『鬼王』なら可能であるが、これはそれとは違った存在だと、召喚士としての俺の勘が警鐘を鳴らす。


「気を付けろ! そいつは召喚士じゃない! もっと別の何かだ!!」

「小手調べだ。早々に死んでくれるなよ、()共」


 ボスの言う贄とはなんなのか。

 そんな些事に気を取られる事無く、俺は戦場に意識を向けた。

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